【デイリー No.1,918】最近の指標から見る米国経済(2014年7月)
2014年7月23日
<ポイント>
・6月の非農業部門雇用者数は前月比+28.8万人と、5カ月連続で20万人超となり、堅調に増加しています。
・6月のISM景況感指数は、足元の活動を示す指数は低下しましたが、総合指数は高水準を維持しています。
・6月のコア消費者物価指数は前年同月比+1.9%と、前月から若干伸びが鈍化しました。
⇒主要な経済指標は安定的に改善しており、年末に向けて年率3%程度の経済成長が見込まれます。QEは今秋にも終了し、雇用の質の改善や物価の上昇などに伴って、2015年後半以降の利上げが見込まれます。
1.雇用者数は増加傾向、景況感は高水準を維持
①雇用統計
6月の非農業部門雇用者数は前月比+28.8万人でした。雇用者数の増加は5カ月連続で20万人超となり、過去3カ月を平均した推移でも、増加ペースが顕著に加速しています。また6月の失業率は6.1%と、前月の6.3%から低下しました。
民間部門を業種別に見ると、小売業や企業向けビジネスサービスをはじめ、教育・医療やレジャー・娯楽業などサービス部門が全体をけん引したほか、建設業や製造業など、幅広い業種において雇用者が増加しました。
また6月は、雇用者の増加や失業率の低下にとどまらず、27週以上の長期失業者数が大きく減少するなど、雇用の質の改善が加速しました。
②ISM景況感指数
6月の製造業景況感指数は前月比▲0.1ポイントの55.3ポイントと5カ月ぶりに低下しました。また、6月の非製造業景況感指数は同▲0.3ポイントの56.0ポイントとこちらは4カ月ぶりに低下しました。
それぞれの内訳をみると、製造業は足元の活動を示す生産指数が低下したものの、生産活動の先行きを示す新規受注指数は一段と上昇し、58.9ポイントとなりました。また非製造業では、足元を示す企業活動指数は大幅に低下しましたが、依然高水準を維持しており、先行きを示す新規受注指数は前月からさらに上昇して61.2ポイントとなりました。製造業、非製造業ともにここ数カ月改善が続き総合の指数が高水準となっていました。6月は現状を示す指数の低下などから総合指数は低下したものの、先行系列がいずれも改善していることから、今後も好調な経済活動が続くと見込まれます。

2.物価上昇は一服、住宅販売は持ち直し続く
①消費者物価
6月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比+2.1%と、前月と同水準となりました。また、変動の大きい食品・エネルギーを除いたコア指数は同+1.9%と前月の同+2.0%から若干伸びが鈍化しました。全体に対する比重の大きい家賃が若干低下したほか、医療費の低下などが物価上昇鈍化の主因となりました。一方、FRBが目標とする個人消費支出(PCE)価格指数は5月に前年同月比+1.8%となり、2月以降上昇傾向となっていますが、FRBの長期目標同+2.0%を下回っています。6月分は8月1日に発表が予定されていますが、6月のCPIの上昇が鈍化したことなどから、大幅な上昇とはならないと思われます。
②住宅関連指標
6月の住宅着工件数は前月比▲9.3%の89.3万件(年率換算)と、2カ月連続で減少しました。また6月の建設許可件数は同▲4.2%の96.3万件と、こちらも2カ月連続での減少となりました。住宅着工件数を地域別(北東部、中西部、南部、西部)にみると、南部が大幅に落ち込んだ一方、そのほかの地域は前月比プラスの堅調な推移となりました。要因としては、南部に季節外れの降雨が集中したことなどが考えられ、一時的なものと思われます。
一方、6月の中古住宅販売は前月比+2.6%の504万戸と、3カ月連続で増加しました。地域別では中西部を中心に4地域すべてで増加し、住宅販売は全体として堅調さを維持していると考えられます。

3.今後の市場見通し
企業景況感は足元の活動を示す指数が前月よりも若干低下したものの、中立水準を上回る高水準を維持しており、先行きを示す指標は一段と上昇していることから、今後も好調さが維持されると見込まれます。また雇用者数は失業率の安定的な低下に必要とされる前月比+15万人~20万人を超える水準での堅調な増加が続いています。今後も景気の安定的な回復基調が見込まれ、年末に向けて年率3%程度の経済成長が見込まれます。
イエレンFRB議長は、7月15日と16日、上下院で議会証言を行い、2014年初から開始されたQEの縮小について、今年10月に終了させる見通しを示しました。しかし、失業率の低下を確認しながらも、失業率は過去の通常のレベルを上回っていると指摘したほか、賃金の伸びが遅いことや物価は未だFRBの長期目標の2%を下回っていることなども指摘しました。こうしたことから、QE終了後も当面は低金利政策が維持されると見込まれます。今後は、以前から指摘されている労働市場のスラック(長期失業者の多さや賃金上昇率の緩慢さ)の改善や、物価動向などが幅広く点検され、利上げのタイミングは2015年後半以降になると見込まれます。