【デイリー No.1,910】米国の債券市場の最近の動向 ~米国債利回りは2.6%を挟むレンジ内で推移~
2014年7月10日
<ポイント>
●低金利政策の長期化観測の一方、足元の堅調な経済指標などから、米国債利回りはレンジ内で推移しました。
●社債スプレッドは、企業の底堅い業績や慎重な財務運営などから、今後も安定的に推移すると見込まれます。
●賃金上昇の緩慢さや物価上昇率の低さなどから当面は低金利政策が維持され、国債利回りは低位で安定する見込みです。 ただし景気回復が進むにつれて、債券利回りには緩やかな上昇圧力がかかると思われます。
1.6月中旬から7月上旬の米国債利回りはレンジ内で推移
米国の10年国債は、6月17日~18日のFOMC後の会見でイエレン議長が低金利政策の継続を示唆したことや、1-3月期GDP成長率の確報値が大幅に下方修正されたことなどから、6月末にかけて利回りが低下しました。また6月中旬以降、イラク情勢が悪化したことも利回り低下要因となりました。7月に入ってからは、ISM景況感指数や雇用統計などが良好な結果となったことから、米国債利回りは上昇に転じました。また、中国やユーロ圏のPMIも堅調な結果を示したことから世界経済の緩やかな回復期待が高まったことも、利回り上昇要因となりました。こうしたことから、6月中旬から7月上旬にかけての米国債利回りは、2.6%を挟むレンジでの推移となりました。
2.日米短期金利差は横ばい、社債スプレッドは縮小傾向
短期金利の動きをロンドン銀行間取引金利(LIBOR)でみると、当面は日米の低金利政策が続くと見込まれることから、低位で安定的に推移しました。7月に入り米国でやや利回りが上昇したものの、日米短期金利差は概ね横ばいで推移しました。
社債スプレッド(国債との利回り差)は、安定的な金融資本市場の動向や底堅い企業決算などから、縮小傾向が続きました。

3.今後の見通し
ISM景況感指数は、引き続き先行きについても改善を示唆しています。また、雇用者数が堅調に増加し失業率も低下しているうえ、長期失業者の割合が低下するなど、労働市場の質の改善も伴ってきています。一方、物価については、平均賃金の伸びが緩慢なことなどから、当面は低水準が続くと見込まれます。このため引き続き低金利政策が維持され、利上げは来年後半以降となりそうです。LIBORなどの短期金利は、当面低水準が見込まれます。
債券市場では、低金利政策が続く見込みから国債利回りは当面低位で安定すると考えられます。ただし景気回復が進むにつれて債券利回りには緩やかな上昇圧力がかかりそうです。社債スプレッドは、主要米国企業の底堅い業績と慎重な財務運営、社債への旺盛な需要などから、今後も安定的に推移すると見込まれます。