【デイリー No.1,889】米国の債券市場の最近の動向 ~景気回復期待が高まり、利回りは上昇~
2014年6月12日
<ポイント>
●米国の企業景況感や雇用統計が堅調だったことなどから、米国債利回りは6月以降上昇に転じました。
●社債スプレッドは、企業の底堅い業績や慎重な財務運営などから、今後も安定的に推移すると見込まれます。
●物価上昇率の低さなどから、当面は低金利政策が維持され、国債利回りは低位で安定する見込みですが、景気が回復するにつれて、債券利回りには緩やかな上昇圧力がかかると思われます。
1.堅調な企業景況感や雇用から、利回りは上昇に転じる
米国の10年国債は、米国の1-3月期GDP成長率の改定値がマイナス成長へと下方修正されたことや、ドイツの失業者数が予想外に増加しECBの追加緩和期待が高まったことなどから、5月末にかけて利回りが低下しました。しかし、6月に入ってからは、5月のISM景況感指数や雇用統計、中国のPMIなどが堅調な結果となったほか、ベージュブックでは広範囲にわたり経済の緩やかな拡大が報告され、景気回復期待が高まったことから、米国債利回りは上昇しました。また、ウクライナ政府が親ロシア派武装勢力との停戦についてロシアなどと協議を進めると報道されるなど、地政学的リスクに落ち着きがみられ始めたことも、国債利回りの上昇要因となりました。

2.日米短期金利差は横ばい、社債スプレッドは縮小
短期金利の動きをロンドン銀行間取引金利(LIBOR)でみると、日米の低金利政策が続くと見込まれることから低位で安定的に推移し、日米短期金利差はほぼ横ばいとなりました。
社債スプレッド(国債との利回り差)は、安定的な金融資本市場の動向や底堅い企業決算などを好感して、縮小傾向が続きました。
3.今後の見通し
米国の企業景況感は、先行きについても改善を示唆しており、米国経済は今後も緩やかな回復を続けると見込まれます。一方で雇用は、雇用者数の増加や失業率の低下がみられるものの、平均賃金の伸びなど労働市場の質の改善は緩慢なままです。物価についても、FRBが重要視する個人消費支出価格指数は長期目標の前年比+2%を下回ったままです。このため、FRBはQE政策終了後も当面は低金利政策を維持し、利上げは来年後半以降となりそうです。
債券市場では、低金利政策が維持される見込みから国債利回りは当面低位で安定すると考えられますが、景気が回復するにつれて債券利回りには緩やかな上昇圧力がかかりそうです。社債スプレッドは、主要米国企業の底堅い業績と慎重な財務運営、社債への旺盛な需要などから、今後も安定的に推移すると見込まれます。