【デイリー No.1,867】米国の債券市場の最近の動向 ~低金利政策維持の見込みから利回り低下~
2014年5月16日
<ポイント>
●米国債利回りは、低金利政策維持の見通しなどから低下しました。
●社債スプレッドは、企業の底堅い業績や慎重な財務運営などから、今後も安定的に推移すると見込まれます。
●物価上昇率が低位にとどまることなどから、当面は低金利政策が維持され、国債利回りは低位で安定する見込みですが、景気が回復するにつれ、利回りには緩やかな上昇圧力がかかると思われます。
1.低金利政策維持の見込みなどから利回りは低下
4月中旬から5月中旬を振り返ると、物価上昇率が低位にあることや、低金利政策が維持されるとの観測に加え、ウクライナ情勢の緊迫化などが、国債利回りの低下要因となりました。米国の10年国債利回りは4月中旬の2.72%程度から、5月15日には2.50%を下回る水準に低下しました。
経済指標をみると、4月の雇用統計やISM景況感指数は良好な結果となる一方、1-3月期のGDP成長率や、4月の小売売上高、鉱工業生産指数などは下振れました。また消費者物価指数の上昇率は上向いてきたものの、FRBが目標とする個人消費支出物価指数の上昇率は低位にとどまっています。イエレンFRB議長は議会証言などで物価や雇用など経済回復が強まるまで低金利政策を維持する旨を発言しています。
また短期金利の動きをロンドン銀行間取引金利(LIBOR)でみると、当面は日米の低金利政策が続くと見込まれることから低位で安定的に推移し、日米短期金利差はほぼ横ばいでした。
2.社債スプレッドは引き続き縮小傾向
社債スプレッド(国債との利回り差)は、安定的な金融資本市場の動向や底堅い企業決算などを好感して、縮小傾向が続きました。
3.今後の見通し
米国経済は今後も緩やかな回復を続けると見込まれることから、FRBは今後もQEの縮小を継続し、今秋にもQE政策を終了すると考えられます。その後の利上げのタイミングについては、イエレン議長が示しているように、雇用や物価など経済回復が強まるまで低金利政策が維持され、利上げは来年半ば以降となりそうです。
債券市場では、低金利政策が維持される見込みから国債利回りは当面低位で安定すると考えられますが、景気が回復するにつれて債券利回りには緩やかな上昇圧力がかかると思われます。社債スプレッドは、主要米国企業の底堅い業績と慎重な財務運営、社債への旺盛な需要などから、今後も安定的に推移すると見込まれます。