【デイリー No.1,859】米国の雇用統計(4月) ~非農業部門雇用者数の増加は3カ月連続の20万人超~
2014年5月7日
<ポイント>
●4月の非農業部門雇用者数は前月比+28.8万人と、3カ月連続で20万人超となりました。
●失業率は6.3%と、前月の6.7%から大幅に低下しましたが、労働参加率の低下が主因と考えられます。
●寒波の影響により一時的に鈍化した雇用は概ね回復基調を取り戻したとみられ、雇用者数は今後も+15万人~20万人前後のペースでの回復が続くと見込まれます。
1.雇用者増は3カ月連続20万人超、失業率は大幅低下
4月の非農業部門雇用者数は前月比+28.8万人と、市場予想(ブルームバーグ集計)の同+21.8万人を大幅に上回りました。また3月は同+20.3万人、2月は同+22.2万人へと上方修正され、雇用者数の増加は3カ月連続での20万人超となりました。
また、4月の失業率は6.3%と、前月の6.7%から大幅に低下しました。しかし、労働参加率が62.8%と前月の63.2%から低下しており、職探しを諦めた人が労働市場から撤退したと考えられ、これが失業率低下の主因と思われます。このため、失業率の大幅な低下が示すほど、労働市場が改善しているとは言い難く、今後一時的に上昇することも考えられます。
2.幅広い業種において雇用者数が増加
雇用者数増加の内訳を見ると、民間部門は前月比+27.3万人、政府部門は同+1.5万人となりました。
民間部門を業種別に見ると、建設業や製造業、小売業やビジネスサービス、教育・医療など幅広い分野において雇用者数が増加しました。一方、労働時間や平均賃金の伸びは前月から横ばいとなりました。平均賃金の前年比の伸びは+1.9%と、リーマンショック以降の+2%前後の伸びにとどまっています。
3.今後の見通し
非農業部門雇用者数の増加幅は3カ月連続で20万人超となり、失業率の安定的な低下に必要とされる前月比+15万人~20万人を超える水準で増加しています。昨年末からは寒波の影響により雇用者数の増加幅が縮小していましたが、2013年12月から2014年4月までの平均は+18.8万人となり、寒波の影響を受ける前の平均的な水準を回復しています。天候要因などによって一時的に鈍化した雇用は、概ね回復基調を取り戻したとみられます。米国では小売売上高や景況感など、多くの経済指標において寒波の影響が一巡したことがうかがわれ、底堅い景気回復が続いています。雇用者数については、今後も景気回復が続くことにより、今後も+15万人~20万人前後のペースでの増加が続くと見込まれます。一方、失業率については、景気の回復に伴い再び職探しをする人が労働市場に参加することで一時的に上昇することも考えられますが、雇用者数の増加を伴うことで基調として改善が続くと見込まれます。
4月29日~30日のFOMCではQE縮小の継続が決定されました。底堅い個人消費など、天候要因によって落ち込んだ経済活動が持ち直しているとの景気判断がその主な背景にあります。労働環境については、平均賃金の伸びが緩慢なことや長期失業者の多さが懸念されるものの、雇用者数の増勢回復や失業率の低下は続くと考えられることから、QE縮小は今秋の終了を目処に継続されると見込まれます。また、QE終了後のゼロ金利政策解除のタイミングについては、雇用のほか幅広い経済指標の改善から点検され、2015年半ば以降となりそうです。