【デイリー No.1,842】米国の主要企業の業績動向と今後の見通し ~大幅下方修正により悪材料を織り込み~
2014年4月10日
<ポイント>
●主要企業の1-3月期の増益率は前年同期比+1.1%と前期の同+9.9%から大きく低下する見込みです。
●新興国の景気減速や米国の寒波などの下方修正要因は、低調な増益率に概ね織り込まれたとみられます。
●世界的な景気の持ち直しを背景に、増益率は2014年後半に再び二桁となる見込みです。リスク要因としてFRBの金融緩和策縮小による金利上昇や新興国不安などの事業への影響に引き続き注意が必要です。
1.2012年7-9月期以来の低水準
9日付のトムソン・ロイターのレポートによると、主要500社(決算発表済み22社実績とそれ以外の予想を含む)の1-3月期の増益率は、前年同期比+1.1%と前期の同+9.9%から大きく低下する見込みです。今年1月初めには同+6.5%の見込みだったものが、決算発表本格化を前に大幅に下方修正された形です。
業種別にみると、国内事業が中心の「電気通信サービス」、「公益事業」がそれぞれ前年同期比+13.2%、同+7.5%と全体を支えるものの、新興国の景気減速により資源価格の下落の影響を受ける「エネルギー」、「素材」が減益の見込みです。ローンの伸び悩みや利ザヤ確保に苦戦する「金融」も減益が見込まれています。

2.幅広く下方修正、悪材料は織り込み済み
今年1月初めからの修正を業種別にみると、全10業種のうち「公益事業」を除く9業種が下方修正されています。増益率の修正幅で大きいのは、「素材」が▲10.5%、「一般消費財・サービス」が▲8.6%などで、要因として新興国の景気減速懸念や寒波の影響などをうかがわせる動きです。
ISM企業景況感指数や雇用統計など米国の最近の経済指標は、寒波の影響が一巡し、景気が回復基調を取り戻していることを示しています。また、中国政府が先週発表した景気刺激策は、同国の景気下振れ懸念を和らげると期待されます。これまでの企業業績の主な下方修正要因が改善に向かっており、決算発表の本格化を前に悪材料は概ね織り込まれたとみることができそうです。
3.今後の見通し
今後の増益率の推移をみると、今年後半には再び二桁増に回復し、2014年通年では前年比+8.4%の底堅い増益が見込まれています。世界的に景気が持ち直す見通しがその主な前提条件です。企業業績動向を占ううえで、米国をはじめ主要国、新興国の景気動向が引き続き重要です。リスク要因として、FRBの金融緩和策縮小により市場金利が上昇することで企業の資金調達コストや投資マインドに影響することや、いくつかの新興国での政情不安が事業に影響を与える場合などに引き続き注意が必要です。