【デイリー No.1,831】最近の指標から見る米国経済(2014年3月)
2014年3月26日
<ポイント>
・2月の非農業部門雇用者数は前月比+17.5万人と、寒波の影響が強まる前の増勢を回復しました。
・2月のISM景況感指数は、先行きの企業活動を示す新規受注指数が製造業、非製造業ともに上昇しました。
・FRBは3月18日~19日のFOMCでQE3の縮小継続やゼロ金利政策の継続を決定しました。フォワード・ガイダンスについては、ゼロ金利政策解除の目安の失業率が削除され、定性的内容に変更されました。
⇒景気の回復などから、FRBは今秋にQE3を終了し、その後6カ月程でゼロ金利政策を解除するとしています。
1.雇用者数は増勢が回復
①雇用統計
2月の非農業部門雇用者数は、前月比+17.5万人と、1月の同+12.9万人(改定値)から増加幅が拡大しました。雇用者数増加の内訳を見ると、民間部門が同+16.2万人と、1月から増加幅が拡大しました。また政府部門は同+1.3万人と、増加に転じました。民間部門を業種別に見ると企業向けサービス業や余暇・娯楽などが拡大しました。寒波による鈍化の反動などが背景と見られます。寒波の影響は一部業種に残るものの総じて和らいでおり、雇用者数は寒波の影響が強まる前の増勢を回復しつつあると思われます。
2月の失業率は6.7%と、1月の6.6%から小幅に上昇しました。ただし、職探しをする人が増加し新たに失業者に加わったことが要因であり、今後は雇用者の増加が続くことで失業率の低下基調が再現すると見込まれます。
②ISM景況感指数
2月のISM製造業景況感指数は53.2ポイントと、1月から上昇しました。内訳を見ると、足元の活動を示す生産指数が、中立水準の50ポイントを下回り、入荷遅延指数は上昇幅が拡大するなど、寒波の影響が続いたと見られます。ただし、生産活動の先行きを示す新規受注指数が、1月の大幅な低下から上昇に転じており、今後の生産活動の持ち直しを示唆する結果となりました。
2月の非製造業景況感指数は51.6ポイントと、1月から低下しました。雇用指数の大幅な低下が主因ですが、先行きの企業活動を示す新規受注指数が2カ月連続の上昇となり、企業活動の更なる悪化には歯止めがかかりそうです。
2.FRBはフォワード・ガイダンスを変更
①金融政策
FRBは3月18日~19日のFOMCにおいて、QE3縮小の継続を決定しました。資産購入額は月額650億米ドルから同550億米ドルへ減額されました。
また、ゼロ金利政策は継続されましたが、その解除の目安である「フォワード・ガイダンス」は変更されました。雇用、インフレ、金融市場などを幅広く検討したうえで「インフレ見通しが2%を下回り、インフレ期待が抑制されている場合は、ゼロ金利政策をQE3終了後もかなりの期間継続する」といった内容です。従来のガイダンスにあったゼロ金利解除の目安である6.5%の失業率水準は、失業率が低下し目安として形骸化していたことから削除されました。
FRB議長は会見で、QE3が今秋で終了する見込みについて再び言及し、ゼロ金利政策を継続する「かなりの期間」については6カ月程としました。このため市場ではゼロ金利政策の解除時期が早まるとの観測が強まりました。
②消費者物価
2月の消費者物価指数は前年同月比+1.1%と、1月の同+1.6%から鈍化しました。大雪でガソリンの需要が減少したことが影響したと見られ、食品・エネルギーを除いたコア指数では同+1.6%と、1月と同じ伸び率となりました。
住宅価格の回復を背景に居住費が緩やかに上昇していることなどから、消費者物価指数、コア指数ともに上昇率はプラスを維持していますが、1%台の低水準が続いています。FRBは経済成長へのリスクとして、緩慢な物価上昇を指摘しています。
3.今後の市場見通し
米国の経済指標は寒波の影響を受け弱い内容が続きましたが、2月の非農業部門雇用者数は、失業率の安定的な低下に必要とされる前月比+15万人~+20万人の増加幅を回復しました。また雇用全体に先行すると見られる人材派遣業の雇用は2月に増加幅が拡大しています。今後も寒波の影響が和らぐに連れ、雇用や景気の回復基調は強まっていくと思われます。また3月のFOMCに際しFRBが発表した四半期毎の経済見通しでは、失業率は下方修正、物価は上方修正もしくは横ばいとされるなど、FRBは金融政策に関連する経済指標の回復に対しより強気となっていることがうかがわれます。景気回復基調の強まりやFRB議長の発言、今回の経済見通しおよびFOMC委員の金利予測から、QE3の今秋での終了に加え、2015年の半ば頃のゼロ金利政策の解除が示唆されます。