ホームマーケット日々のマーケットレポート【デイリー No.1,811】最近の指標から見る米国経済(2014年2月)/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

【デイリー No.1,811】最近の指標から見る米国経済(2014年2月)

2014年2月28日

<ポイント>
●1月の非農業部門雇用者数は前月比+11.3万人となり、失業率は6.6%と12月の6.7%から低下するなど、雇用の緩やかな改善基調が続きました。
●寒波の影響からISM製造業景況感指数などが悪化しましたが、寒波が和らげば景気は持ち直しそうです。
⇒失業率は、政策金利変更の目安である6.5%に近い水準まで低下したこともあり、3月18日~19日の次回FOMCで、現行のフォワード・ガイダンスが変更される可能性に注目です。

1.雇用者数の増勢は緩慢だが失業率は低下

①雇用統計
 1月の非農業部門雇用者数は前月比+11.3万人と、12月から増加幅が拡大しましたが、市場予想の同+18.0万人(ブルームバーグ集計)を下回りました。やや弱い結果となった背景には、昨年後半の増勢の反動や寒波の影響があると思われます。業種別では、小売業が年末商戦の反動や寒波の影響から減少に転じた一方、建設業は増加に転じ、製造業は増加幅が拡大しました。民間雇用の先行指標とされる人材派遣業も増加が続いており、雇用の緩やかな改善基調は続いていると思われます。
 1月の失業率は6.6%と、12月の6.7%から低下しました。内容的にも、労働力人口と就業者数がともに増加するなど、質の良い低下となりました。

②ISM製造業景況感指数
 1月のISM製造業景況感指数は51.3ポイントとなり、12月の56.5ポイントから大きく低下しました。寒波の影響が主因と思われます。米国では昨年末頃より、寒波による降雪などにより、輸送などの経済活動が制約を受けました。
 製造業指数を構成する指数のうち、入荷遅延指数以外は全て12月から低下しました。特に、生産活動の先行きを示す新規受注指数は大幅な低下となりました。一方、入荷遅延指数は12月の上昇から更に加速しており、寒波による物流の遅れが強まったことがうかがわれます。ただし、1月は在庫指数が低下していることから、在庫調整圧力は軽微と思われます。寒波の影響が和らげば生産活動は持ち直すと見込まれます。

2.FRBはフォワード・ガイダンスの変更を検討

①金融政策
 FRBは1月28日~29日のFOMCで、QE3の縮小継続を決定し、資産購入の月額を750億米ドルから650億米ドルに減額しました。ゼロ金利政策は維持しました。
 また、インフレ率が2%を下回る限り、失業率が6.5%を下回った後も政策金利を据え置くのが適切とする方針も維持しました。ただし2月20日公表のFOMC議事録では、会合の参加者が、失業率の順調な低下もあり、政策金利変更の当初の目安である6.5%の失業率水準を含むフォワード・ガイダンスの変更を検討していることが示されました。

②消費者物価
 1月の消費者物価指数は前年同月比+1.6%と、12月の同+1.5%から小幅に上昇しました。変動の大きい食品・エネルギーを除いたコア指数は同+1.6%と、12月の同+1.7%から小幅に低下しました。
 住宅価格の回復を背景に居住費が緩やかに上昇していることなどから、消費者物価指数、コア指数ともに上昇基調を維持しているものの、その上昇率は1%台の低い水準が続いています。

3.今後の市場見通し

 米国の多くの経済指標は寒波の影響を受け弱含んでいるものの、今後寒波の影響が和らいで行けば徐々に回復基調を取り戻すと思われます。FRBは経済指標の回復を慎重に確認しながらQE3の縮小を今後も続けると見込まれます。イエレンFRB議長は2月27日の議会証言で、景気が予想通りに回復して行けば、QE3の縮小は今年の秋頃に終了する可能性に言及しています。また、FOMC議事録や議会証言で、物価上昇の鈍さへの警戒や、労働市場にスラック(需給の緩み)が残っていることへの問題意識が繰り返し示されています。今後フォワード・ガイダンスには、物価など失業率以外の数値基準や、数値以外の定性的な判断基準が加わる可能性があり、3月18日~19日の次回FOMCに注目です。また政策金利については、物価や雇用の緩慢な改善状況などから、当面現行水準が据え置かれると思われます。
 米国の株式市場は、米国をはじめ世界的に景気が持ち直すと見込まれることや企業業績の改善期待などから、底堅い推移が見込まれます。債券市場では、景気回復に伴い利回りに緩やかな上昇圧力がかかると見られます。為替市場は、足元でリスク回避姿勢の強まりなどから円を買う動きが見られましたが、日米の金融政策の方向性の違いなどから、中期的には円安・米ドル高観測が残ると思われます。

関連マーケットレポート