【デイリー No.1,787】米国の金融政策(1月) ~QE3の縮小を継続~
2014年1月30日
<ポイント>
●FRBは、資産購入額を従来の750億ドルから、650億ドルに減額することを決定しました。
●政策金利については、インフレ率が2%を下回る場合、失業率が6.5%を下回った後も現行水準で据え置くことが適切との姿勢を維持しました。
●FRBは、緩慢な物価動向などからゼロ金利政策を当面続け、QE3の縮小は慎重に進めると思われます。
1.QE3の縮小継続を決定
FRBは1月28日~29日のFOMCにおいて、雇用見通しの改善などから、QE3縮小の継続を決定しました。資産購入額は1月実施の月額750億米ドルから、2月には同650億米ドルへ減額する方針です。減額の内訳は、長期国債が400億米ドルから350億米ドルに、住宅ローン担保証券(MBS)が350億米ドルから300億米ドルにそれぞれ減額されます。
政策金利については、インフレ率が2%を下回る場合は、失業率が6.5%を下回った後も政策金利を現行水準で据え置くことが適切とする姿勢も維持しました。
2.声明では景気判断をやや上方修正
今回のFOMCの声明を前回と比べると、大きな変更はありませんでしたが、景気全般についてやや上方修正されました。特に個人消費と設備投資についてFRBは、ここ数カ月は回復が早まったとしました。雇用に関しては、12月の雇用者数の増勢鈍化などから、指標によりまちまち、としましたが、全体としては改善を示したとの見方を維持しています。ただし、失業率については前回声明と同様、まだ高水準との判断も維持しました。また物価については前回声明同様、インフレ率が目標の2%を長期的に下回ることは経済成長に対するリスクになり得るとし、物価上昇が緩慢なことへの警戒姿勢を維持しています。
3.今後の市場見通し
今回のFOMCについては、足元の新興国市場の動揺などに対するFRBの評価や政策判断への影響などが注目されていましたが、声明では特に言及はありませんでした。また、寒波の影響などから米国の経済指標は足元でやや悪化していますが、声明では米国経済は回復基調にあるとの判断が維持されました。FRBは、今後も主に国内状況を基に政策判断を行い、QE3の縮小を続けると思われます。ただし、緩慢な物価上昇を引き続き警戒していることなどから、QE3の縮小は経済指標を確認しつつ慎重に実施するとともに、ゼロ金利政策は当面続けると見込まれます。
米国の株式市場は、足元ではアルゼンチンの通貨急落をきっかけに新興国市場が下落した影響を受けましたが、米国をはじめ世界的に景気が持ち直すと見込まれることや企業業績の改善期待などから、中期的には堅調な推移が見込まれます。債券市場では、景気回復に伴い利回りに上昇圧力がかかると見られます。為替市場は、足元でリスク回避姿勢の強まりなどから円高が進みましたが、日米の金融政策の方向性の違いなどから、中期的には円安・ドル高観測が続くと思われます。