【デイリー No.1,783】最近の指標から見る米国経済(2014年1月)
2014年1月28日
<ポイント>
●12月の非農業部門雇用者数は前月比+7.4万人と、寒波の影響などもあり増加幅が11月から縮小しました。
●12月のISM製造業景況感指数は、新規受注や在庫の指数の動きが生産改善を示唆する内容となりました。
●12月の消費者物価指数(食品・エネルギー除く)は前年同月比+1.7%と、低位で安定的な推移が続きました。
⇒景気は回復が見込まれる一方、FRBは緩慢な物価動向を警戒しておりゼロ金利政策を当面続けそうです。
1.雇用者数の増勢は寒波の影響などから鈍化
①雇用統計
12月の非農業部門雇用者数は前月比+7.4万人と、11月の同+24.1万人(改定値)から増加幅が大きく縮小しました。寒波の影響から運輸や建設の雇用者数が減少しました。 また12月は、製造業など、寒波の影響を受けにくい業種も雇用の増勢が鈍化するなど、やや弱い内容となりました。ただし、雇用全体の先行指標とされる人材派遣業の増加幅が拡大しており、雇用の改善基調は続くと思われます。
12月の失業率は6.7%と、11月の7.0%から低下しました。ただし、寒波の影響などにより、失業者の一部が一時的に労働市場から退出したことが主因と見られます。
②ISM景況感指数
12月のISM製造業景況感指数は57.0ポイントと、11月に続き高水準となりました。またISM非製造業景況感指数は53.0ポイントと、11月の53.9ポイントから低下しました。
製造業指数の内訳を見ると、生産活動の先行きを示す新規受注指数が11月から上昇した一方、在庫指数は中立水準の50ポイントを下回るなど、今後の生産活動の改善を示唆する内容となりました。また、非製造業指数の内訳を見ると、新規受注指数が大きく低下しました。業種別では運輸・倉庫業などの景況感が悪化していることから、新規受注指数の低下に関しては年末商戦の反動や寒波の影響など一時的要因があったと思われます。また、製造業、非製造業ともに雇用指数は上昇しており、米国の雇用環境が良好なことを示す結果となりました。
2.小売売上高は堅調
①小売売上高
12月の小売売上高は前月比+0.2%と、11月からやや鈍化しました。自動車・同部品が寒波の影響などから減少したことが主因とみられます。自動車・同部品を除いた小売売上高は同+0.7%と、堅調に増加しました。
12月の内訳を見ると、自動車・同部品は前月比▲1.8%と減少に転じた一方、インターネット販売など無店舗小売は同+1.4%と引き続き堅調でした。また食品や衣料は増加に転じました。12月の小売売上高は一部で寒波の影響が見られたものの、総じて堅調な消費需要を示す結果となりました。
②消費者物価
12月の消費者物価指数は前年同月比+1.5%、変動の大きい食品・エネルギーを除いたコア指数は同+1.7%でした。コア指数が4カ月連続で同+1.7%となるなど、低位で推移している主な要因は、家賃などのサービス価格が安定していることや、テレビ、家具、玩具など幅広い品目での価格下落などです。
物価上昇が緩慢なことの背景には、新興国の景気が減速するなど、世界経済の回復が緩やかなことや、米国の個人所得の伸びが鈍いことがあると見られます。
3.今後の市場見通し
雇用者数など最近の経済指標は寒波によりやや弱含みましたが、ISM製造業景況感指数は生産改善を示唆するなど、景気の回復基調には変化はないと見られます。1月も寒波の影響が残ると見られますが、人材派遣業の増加などから雇用の改善は続いていると見られます。個人消費は今後も改善が続き、米国景気は底堅い回復が続くと思われます。一方、景気は回復傾向にあるものの、FRBは物価上昇が緩慢なことを警戒しています。昨年12月には、物価上昇率が2%を下回る場合は、失業率が6.5%を下回った後も政策金利を現行水準で据え置くのが適切としており、ゼロ金利政策は当面続くと思われます。QE3についても、FRBは経済指標の改善を確認しつつ、慎重に縮小を続けると思われます。
米国の株式市場は、足元ではアルゼンチンの通貨急落をきっかけに新興国市場が下落した影響を受けましたが、米国をはじめ世界的に景気が持ち直すと見込まれることや企業業績の改善期待などから、中期的には堅調な推移が見込まれます。債券市場では、景気回復に伴い利回りに上昇圧力がかかると見られます。為替市場は、足元でリスク回避姿勢の強まりなどから円高が進みましたが、日米の金融政策の方向性の違いなどから、中期的には円安・ドル高観測が続くと思われます。