【デイリー No.1,774】米国の消費者物価指数(2013年12月) ~やや低位での安定が続く~
2014年1月17日
<ポイント>
●12月の消費者物価指数は前年同月比+1.5%、うちコア指数(食品・エネルギー除く)は同+1.7%でした。
●グローバルな景気減速傾向を受け同指数は緩やかに鈍化していますがコア指数は安定的に推移しています。
●所得環境の改善の遅れ等から、当面同指数はやや低位での安定した推移が続くと見込まれ、米連邦準備制度理事会(FRB)による現行のゼロ金利政策は長期化すると思われます。
1.コア指数はやや低位の上昇率で安定
12月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比+1.5%、中心的な指標であるコア指数(食品・エネルギー除く)は同+1.7%でした。厳しい寒波でエネルギー価格が反発したことから、総合指数が11月の同+1.2%から加速した一方、コア指数は4カ月連続で+1.7%と、やや低位の上昇率で安定しています。
2.家賃・宿泊費の安定した上昇がコア指数を下支え
コア指数の動きは、サービスコア指数が安定した上昇率を維持していることが影響していると考えられます。12月のサービスコア指数は前年同月比+2.3%で、2%台の上昇率が2年以上続いています。これは、家賃・宿泊費が前年同月比で2%台の上昇率で安定して推移しているためです。家賃・宿泊費は、コア指数の41.8%を占める最大ウエイトの費目で、サービスコア指数は家賃の動きでほぼ決まるといっても過言ではありません。家賃・宿泊費は住宅価格の回復を受けて安定した上昇が続いているものとみられます。
一方、財コア指数は13年の春以降小幅ながら低下傾向にあり、すでに10カ月連続でゼロ以下の上昇率となっています。衣料品の上昇率鈍化が続いているほか、医療器具、娯楽用品、自動車など幅広い品目で鈍化が目立ちます。コア指数の上昇率が、中・長期的に見ると徐々に鈍化しているのは、財コア指数の動きに拠るところが大きいと思われます。
3.今後の見通し
CPIの上昇率がやや低位で安定しているのは、グローバルの景気が、回復はしているものの今一つ力強さに欠けることが要因と思われます。特に、需要のけん引役とされる新興国の景気が減速傾向にあったことの影響は無視できません。また、米国国内の要因としては、所得環境が雇用環境に比べて改善が遅れていることも一因と思われます。雇用環境は12月の完全失業率が7%を割り込むなど、着実に改善している一方、民間企業の時間当たり賃金は2010年から約4年に渡って前年同月比で2%程度の上昇率にとどまっています。
2014年のグローバル、ないし米国の景気は、先進国が中心となって実施してきた強力な金融緩和の効果が世界に波及し、2013年よりは高い経済成長率になると予想されます。また、新興国の景気も下げ止まりの様相を示しており、CPIの上昇率鈍化がさらに進む可能性は低いと思われます。一方、所得環境の改善の遅れから、上昇が加速していく兆候も見られず、当面は現状並みのやや低位な上昇率で安定した推移が続くと予想されます。またFRBは、12月の量的金融緩和策の縮小を決めた際、物価上昇率が2%を下回る場合は、失業率が6.5%を下回った後も政策金利を現行水準で据え置くのが適切としており、現行のゼロ金利政策の長期化が予想されます。