【デイリー No.1,769】米国の債券市場の最近の動向 ~QE3の縮小決定、今後も景気回復で債券利回りに上昇圧力~
2014年1月9日
<ポイント>
・米国債は11月に経済指標の改善から利回りが上昇しましたが、12月以降もQE3縮小決定から上昇しました。
・社債は底堅い企業業績などから、10月以降、社債スプレッド (国債との利回り差)の縮小傾向が続いています。
・米国の債券利回りには、景気の回復基調が続くことなどから、今後も上昇圧力がかかると見込まれます。
ただし社債スプレッドは、企業の底堅い業績や慎重な財務運営などから、安定的に推移すると思われます。
1.国債利回りは上昇、社債スプレッドは縮小
米国債市場では、昨年11月に経済指標の改善を受け利回りが上昇し、12月に入ってからも雇用統計の改善などで上昇が続きました。12月18日にはFRBがQE3の縮小を発表し、米国債利回りは一段と上昇しました。12月下旬には、米国の10年国債利回りは3%を上回る水準まで上昇しました。
社債市場では、景気回復や底堅い企業業績から10月頃より社債スプレッド(国債との利回り差)が縮小していましたが、12月以降も縮小傾向が続きました。
短期金利の動きをロンドン銀行間取引金利(LIBOR)で見ると、日米の低金利政策が続くと見込まれることから総じて低位安定で推移し、日米短期金利差はほぼ横ばいとなりました。
2.FRBは雇用などの見通し改善からQE3縮小を決定
FRBは昨年12月のFOMCでQE3縮小を決定しました。今年の1月以降、毎月の資産購入額は月額850億円米ドルから100億米ドル減額され、同750億米ドルとなります。
政策金利については、向こう1~2年のインフレ見通しが2.0%からプラス0.5%の範囲に収まり、失業率が6.5%を下回るまで、現行水準が適切、との姿勢を維持しました。今回はこれに加え、インフレ率が2.0%を下回る場合は、失業率が6.5%を下回った後も政策金利を現行水準で据え置くことが適切と見込まれる、としました。FRBは、上昇ペースが鈍化しているインフレの動向に配慮する姿勢を強めていると見られます。
3.今後の見通し
米国では雇用の持ち直しから個人消費が改善し、景気は底堅い回復が続くと思われます。景気見通しの改善からFRBはQE3の縮小を決定しましたが、1月8日公表の議事録ではQE3の継続が金融の安定へのリスクとなる面を懸念していることが示されており、QE3縮小は今後も続くと見込まれます。ただし、失業率がまだ高いことなどから、QE3の縮小は経済指標の改善を確認しつつ行われ、低金利政策は当面継続されると思われます。
債券市場では、景気回復が続くことなどから、債券利回りに上昇圧力がかかると思われます。ただし社債スプレッドは、主要米国企業の底堅い業績と慎重な財務運営、社債への投資家需要などから、今後も安定的に推移すると思われます。