ブラジル大統領の弾劾(2016年5月)
政権交代後は、経済政策が市場の焦点 【デイリー】
2016年5月12日
【ポイント1】弾劾法廷が設置されれば、ルセフ大統領は大統領停職へ
弾劾成立の可能性高まる
■ブラジル議会上院では、ルセフ大統領の弾劾法廷設置についての審議を行っています。メディア報道によると過半数が賛成表明を行いました。法廷設置が決まれば、ルセフ大統領は最大180日間の大統領停職となり、テメル副大統領が大統領職を代行することになります。
■最終的に弾劾が成立するには、弾劾裁判において上院の3分の2の賛成が必要です。多くの議員がルセフ大統領の弾劾に賛成を表明しており、弾劾成立となる可能性が高いようです。また、弾劾が成立する前にルセフ大統領が辞任するとの見方も出ているもようです。
【ポイント2】経済は最悪期脱却か
今後、経済立て直しへ
■ブラジル経済は、去年に続いて今年もマイナス成長が見込まれていますが、対外収支の改善もあり、最悪期は過ぎつつあるとの見方が出ています。テメル氏が政権を担えば、経済立て直しに注力すると見られます。財務大臣や中銀総裁の交代も視野に入れた内閣改造を行って、財政健全化や規制緩和等に取り組むことが見込まれます。
■ブラジルレアルは、こういった動きを先取りする形で、今年の2月以降、上昇に転じています。

【今後の展開】新政権の政策により景気が明るさを増せば、資金流入が持続へ
■ブラジルレアルが、過去数年の下落傾向を脱し、上昇に転じている背景には、国内要因と海外要因があります。国内要因は、政権交代と新たな経済政策への期待があげられます。海外要因は、中国経済が好転を見せ始めたことや、原油を始めとする資源価格が上昇し、世界的に金融市場が安定化していることなどです。
■海外要因は引き続き良好と見られますが、政権交代の期待感の高まりがかなり織り込まれたことから、レアル相場は一旦は概ねレンジ内での推移となりそうです。先々については、景気が徐々に改善を示せば、ブラジル市場への持続的な資金流入が期待できます。この点で、新政権の経済政策に市場の目が注がれます。