ホームマーケット日々のマーケットレポート【デイリー No.1,901】最近の指標から見るブラジル経済(2014年6月)/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

【デイリー No.1,901】最近の指標から見るブラジル経済(2014年6月)

2014年6月27日

<ポイント>
●消費は底堅いものの、生産や輸出が低迷していることなどから、景気は全体として勢いを欠く状況です。
●物価上昇率は、干ばつや賃金の上昇などから高止まりが見込まれます。
●ブラジル中央銀行は政策金利を現行水準で当面据え置き、景気と物価の動向を注視する姿勢です。
⇒景気の先行き不透明感や大統領選が波乱要因ながら、高金利や中銀のレアル買いの為替介入、投資資金の流入などがレアルを支える見込みです。

1.消費は堅調、生産と輸出は低迷

①小売売上高
 4月の小売売上高(物価の影響を除いた実質ベース)は前年同月比+6.7%と、前月の同▲1.1%からプラスに転じました。イースター休暇が昨年の3月から4月にずれたことが大きく影響したと見られます。3カ月移動平均では同+4.8%と、消費の基調は引き続き底堅いと思われます。
 4月の失業率(季節調整前)は4.9%と、予想(5.2%)に反して前月(5.0%)から低下しました。失業率は2009年以降低下傾向が続いており、雇用情勢は良好です。賃金の上昇が続いていることもあり、消費は底堅い傾向が続きそうです。

②鉱工業生産指数・輸出
 4月の鉱工業生産指数は前年同月比▲5.8%と、前月の同▲0.7%(改定値)からマイナス幅が拡大しました。生産は昨年半ばから低迷が続いています。
 5月の輸出は前年同月比▲4.9%となり、1-5月期の累計では、前年同期比▲3.4%になりました。1-5月期の累計を地域別に見ると、輸出先の約21%を占める中国向けが前年同期比+5.7%、米国向けは同+12.1%(全体の約12%)と拡大していますが、欧州連合向けは同▲8.4%(同約18%)と落ち込んでいます。
 消費は底堅いものの、生産や輸出が低迷していることなどから、景気は全体として勢いを欠く状況です。ただし、中国をはじめ海外では、政府や中央銀行が景気に配慮した政策を続ける見込みです。景気は外需主導で緩やかながら回復に向かうと思われます。

2.中銀は利上げを一旦止め、物価と景気を注視

①消費者物価指数
 5月の消費者物価指数は前年同月比+6.37%となり、1月(同+5.59%)を直近の底として4カ月連続で上昇しました。内訳を見ると、食品、サービス、教育の高止まりや、住宅や日用品の上昇などが目立ちます。賃金の上昇、過去のレアル安、深刻な干ばつなどの影響と思われます。
 賃金の上昇や干ばつの影響は今後も残ると見られます。物価は全体として、ブラジル中央銀行(以下、中銀)の物価目標レンジ(年+2.5%~+6.5%)の上限近辺で当面高止まりしそうです。

②金融政策
 中銀は5月28日、政策金利を11.00%に据え置きました。中銀は政策金利を2013年4月以降9会合連続して合計3.75%引き上げましたが、足元の景気が勢いを欠くため、利上げを一旦止め、景気と物価の動向を見極める考えと見られます。
 6月に入り発表された経済指標からは、景気と物価の基調に目立った変化が見られず、中銀は政策金利を当面現行水準で据え置く可能性が高いと思われます(次の会合は7月15日~16日)。

3.今後の市場見通し

 ブラジルでは10月に大統領選挙が予定されており、現職のルセフ大統領は2期目に向けて出馬する意向です。各種世論調査では、対抗馬よりも支持率は優位にありますが、景気の低迷と物価の高止まりが続くなか、苦戦が予想されています。政権交代による経済政策の転換を期待する向きが多いことから、足元では対抗馬の支持率上昇がレアルや株価の上昇につながる展開となっています。
 中銀は、6月末に期限を迎えるレアル買いの為替介入プログラムについて、今年12月31日まで現行の規模で継続する方針を発表しました。中銀は、必要な場合には介入規模を拡大するとしており、レアルを今後も支える姿勢です。また、高金利を狙う証券投資や、直接投資は引き続き旺盛であり、レアルの安定化要因になっています。
 経済・政治面からの波乱材料はありますが、中銀の政策や海外からの投資資金の流入がレアルを支える見込みです。

関連マーケットレポート