【デイリー No.1,885】メキシコの金融政策(6月) ~予想外の政策金利引き下げ ~
2014年6月9日
<ポイント>
●メキシコ銀行(中央銀行、以下中銀)は6日、政策金利を0.5%引き下げ、3.0%とすることを決定しました。
●中銀は緩慢な景気とインフレの落ち着きを考慮し、政策金利を史上最低水準から更に引き下げることで景気を支援する狙いと見られます。当面は同金利を据え置き、景気・物価への効果を注視する姿勢と思われます。
●景気見通しの改善や経済構造改革の進展期待などから、メキシコペソは底堅い推移となりそうです。
1.史上最低水準の政策金利を更に引き下げ
政策金利(翌日物銀行間レート)の引き下げは、昨年10月の会合以来、5会合ぶりです。
既に政策金利が史上最低水準にあり、インフレが落ち着くなか、中銀が据え置きの意向を示していたことなどから、ブルームバーグがまとめた事前予想では、20名のエコノミスト全員が据え置きを予想していました。

2.景気回復は緩慢、インフレは落ち着く見通し
中銀は、5月21日に公表した「インフレ・レポート」で2014年の実質GDP成長率を前年比+2.3%~+3.3%に下方修正しました(従来は同+3.0%~+4.0%)。今回の利下げ決定に際して、その予想を更に下回る可能性を指摘しました。消費や民間投資など内需が弱いことが主な背景です。
一方、消費者物価指数は5月前半に前年同月比+3.44%と今年1月(同+4.48%)を直近のピークに低下し、中銀のインフレターゲットの年+3%(変動幅±1%)に近づきつつあります。景気の回復が緩やかにとどまっていることなどから、中銀は2015年1-3月期にはインフレがターゲット近辺に落ち着くと見ています。
中銀は、緩慢な景気動向を警戒するなか、インフレ見通しが落ち着いていることなどを考慮し、政策金利を史上最低水準から更に引き下げることで景気を支援する狙いと見られます。
3.今後の見通し
中銀は今後の金融政策について、当面更なる利下げは推奨できないとの考えを示しました。景気回復が見込まれることや、物価上昇率を差し引いた実質金利がマイナスになったなどを考慮したためと思われます。中銀は当面政策金利を据え置き、景気や物価への効果を注視する姿勢と見られます。
政府の財政支出拡大、米国景気の回復などから、メキシコの景気見通しは今後改善すると見られ、ペソは底堅い展開となりそうです。また、政府はエネルギーや通信など各産業の構造改革を進めており、エネルギー部門に関しては、外資の導入による積極的な投資などを可能とする関連法案が近く成立する見通しです。こうした経済構造改革の進展期待も、ペソを支える要因になると思われます。
