【デイリー No.1,876】ブラジルの金融政策(5月) ~大方の予想通り、政策金利を据え置き~
2014年5月29日
<ポイント>
●ブラジル中央銀行(以下、中銀)は28日、政策金利を11.00%に据え置くことを発表しました。
●中銀は、景気回復の緩慢さと物価上昇率の高止まりの両方を見据え、政策金利を当面現行水準で据え置く可能性が高いと思われます。
●高い金利水準に加え、米国など海外景気や国内景気の回復期待は、レアルの支援材料になりそうです。
1.大方の予想通り、政策金利を据え置き
今回の政策金利据え置きは、全会一致での決定です。背景には、足元までの景気回復が緩慢なため利上げを一旦止め、景気と物価の動向を見極める考えがあると見られます。
中銀は前回の声明文で、「次回会合まで経済見通しの変化を注視する」との姿勢を示していました。今月発表された3月の鉱工業生産指数や小売売上高が前年同月比マイナスに転じたことなどを受けて、ブルームバーグの事前調査では53名のエコノミストのうち46名が政策金利の据え置きを予想(7名は0.25%の利上げを予想)していました。

2.景気と物価の両にらみを継続
景気は消費の底堅い基調や政府の積極的な公共投資に支えられて持ち直す方向と見られます。ただし、足元で生産や輸出が低迷しており、回復ペースは緩やかにとどまりそうです。
一方、消費者物価指数は、深刻な干ばつによる食品価格や電力料金(水力発電への依存度が高い)への影響、賃金の上昇などにより物価目標レンジ(年+2.5%~+6.5%)の上限に近い水準で高止まる見込みです。今回の声明文で政策金利据え置きに「現時点では」という文言が加えられ、今後の追加利上げの可能性も残したことは、物価への警戒姿勢の表れと見られます。
中銀は、こうした景気回復の緩慢さと物価上昇率の高止まりの両方を見据え、政策金利を当面現行水準で据え置く可能性が高いと思われます。
3.今後の市場見通し
高い金利水準に加え、米国など海外景気や国内景気の回復期待は、レアルの支援材料になりそうです。ただし、これまでレアルを支える要因の一つであった中銀によるレアル買いの為替介入プログラムは、6月末で終了する予定ですが、景気への配慮から6月末を待たずに縮小される可能性が浮上しています。中銀の為替政策は、短期的なレアル安材料として注意が必要です。
市場参加者は景気の動向や中銀の金融・為替政策に注目していると見られ、レアルは当面経済指標などにより振れやすく、方向感のない展開が続きそうです。
