【デイリー No.1,874】最近の指標から見るメキシコ経済(2014年5月)
2014年5月27日
<ポイント>
●低金利、財政支出、米国景気の持ち直しなどが下支えとなり、メキシコの経済成長率は緩やかな上昇が見込まれます。
●メキシコ銀行(中央銀行、以下中銀)は消費者物価指数が年末には前年同月比+4%を下回り、2015年は同+3%を若干上回る水準に落ち着くと予想しています。中銀は、史上最低の政策金利を当面維持し景気を支える方針です。
●政府は石油開発の政策見直しなど経済構造改革に積極的に取り組んでいます。メキシコペソは、当面の景気の持ち直し期待に加え、改革による中長期的な成長率の上昇期待などから、米ドルや円などに対し底堅く推移しそうです。
1.経済成長率は緩やかに上昇する見込み

①実質GDP成長率
1-3月期の実質GDP成長率は、前年同期比+1.8%と、前期の同+0.7%から上昇しました。ただし、市場予想(+2.1%)を下回りました。建設業の低迷が続いたことや、関係の深い米国の景気が天候要因などから弱含んだことなどが影響しました。
中銀は、5月21日に公表した「インフレ・レポート」で実質GDP成長率の予想を2014年は前年比+2.3%~3.3%(従来は同+3.0%~4.0%)、2015年は同+3.2%~4.2%(変更なし)としました。史上最低水準の政策金利、政府の積極的な財政政策、米国景気の持ち直しなどが下支えとなり、メキシコの経済成長率は緩やかに上昇すると見込まれます。
②輸出・自動車生産
輸出は3月に前年同月比+4.5%と、1月のマイナスの後は2カ月連続で拡大しています。また、自動車生産台数は4月に同+3.9%と増加し、昨年末のマイナスから持ち直しています。米国では、天候要因などから冬場に自動車販売台数が年率換算で1,500万台程度と伸び悩んでいましたが、4月には同1,600万台前後のペースに回復しています。良好な雇用環境を背景に今後も高水準での推移が期待されます。こうしたことから、メキシコの自動車生産、輸出ともに堅調さを維持する見込みです。
③小売売上高
3月の小売売上高は前年同月比+1.7%と、2カ月連続のマイナスからプラスに転じました。また、4月の消費者信頼感指数は90.3と、2月を直近の底として回復傾向にあります。年初は公共料金の引き上げや新税制などからインフレが加速して消費を抑えたと見られますが、足元ではインフレの落ち着きとともに消費が持ち直しつつあると思われます。政策金利が低水準にあることもあり、消費は持ち直し傾向が続きそうです。
2.政策金利は、史上最低水準に当面据え置き

①消費者物価
消費者物価指数は1月と2月に一時中銀のインフレ・ターゲット(年+3%、変動幅±1%)の上限4%を上回りましたが、3月から上限を下回り、4月は前年同月比+3.5%となりました。中銀は、年初のインフレの加速を公共料金の引き上げや新税制などによる一時的なものと考えています。今後について中銀は、食品価格の変動や前年との比較による効果などから同+4.0%を数カ月間上回る可能性があるものの、年末には同+4%を下回り、2015年は同+3%を若干上回る水準に落ち着くと予想しています。
②政策金利
中銀は昨年10月に、政策金利を史上最低の3.50%に引き下げるとともに利下げの打ち止めを示唆し、その後、政策金利を据え置いています。中銀は、米国を中心とした海外景気の底堅さなどから景気は回復方向と予想してはいるものの、インフレは総じて落ち着いて推移すると見ており、史上最低の政策金利を当面維持し景気を支える姿勢です。
3.今後の市場見通し

中銀は前述の「インフレ・レポート」で、低成長の要因として長年にわたり生産性の伸びが低くとどまってきたことを挙げ、足元で政府が進めている経済構造改革への取り組みを評価しています。また中銀は、この改革が実際に効果を生むためには、政府が数年にわたり改革への取り組みを続けることが不可欠との考えも示しました。
昨年12月、石油開発に外国企業の参入を認める憲法改正案が国会で承認されました。改革実施に必要な関連法案は、現在審議中であり、6月末までに承認されると見られています。改革が実際に経済成長に寄与するのは来年以降と見られ、早期の法案成立が待たれる状況です。
ぺソは、当面の景気の持ち直し期待やこうした経済構造改革による中長期的な成長率の上昇期待などから、米ドルや円などに対し底堅く推移しそうです。
債券相場については、インフレの落ち着きや政策金利の据え置きなどの見通しから、当面安定的に推移しそうです。