【デイリー No.1,869】最近の指標から見るブラジル経済(2014年5月)
2014年5月20日
<ポイント>
●消費が底堅いものの、生産や輸出が低迷していることなどから、景気回復は緩やかにとどまりそうです。
●物価上昇率は、干ばつや賃金の上昇による影響などから高止まりが見込まれます。
●ブラジル中央銀行(以下、中銀)は、景気回復が緩慢ななかでも物価上昇圧力を抑制するという厳しい対応を迫られています。レアルは当面経済指標などにより振れやすく、方向感のない展開となりそうです。
1.景気の回復は緩やかにとどまる見込み
①小売売上高
3月の小売売上高(物価の影響を除いた実質ベース)は前年同月比▲1.1%と、前月の同+8.7%(改定値)からマイナスに転じました。イースター休暇が昨年の3月から4月にずれたことが大きく影響したと見られます。3カ月移動平均で見ると同+5%前後での推移となっており、やや減速感はあるものの消費の基調は引き続き底堅いと思われます。
3月の失業率(季節調整前)は5.0%と、予想(5.4%)に反して前月(5.1%)から低下しました。失業率は2009年以降低下傾向が続いており、雇用情勢は良好です。賃金の上昇が続いていることもあり、消費は底堅い傾向が続きそうです。
②鉱工業生産指数・輸出
3月の鉱工業生産指数は前年同月比▲0.9%と、前月の同+4.4%からマイナスに転じました。月によって振れがあるため直近6カ月で見ると平均同+0.3%と、生産はほぼ前年並みとなり、伸び悩んでいます。
4月の輸出は前年同月比▲4.4%となり、2カ月連続でマイナスになりました。地域別に見ると、輸出先の約20%を占める中国向け1-4月期に前年同期比+13.2%(1-3月期は同+24.2%)と、減速しました。
一方、全体の約12%を占める米国向けは1-4月期に同+16.0%と増加ペースが加速(1-3月期は同+10.6%)しました。中国で追加的な景気支援策が期待されることもあり、輸出は持ち直す可能性があります。

2.中銀は物価と景気の両方を警戒
①消費者物価指数
4月の消費者物価指数は前年同月比+6.28%と前月の同+6.15%から上昇し、中銀の物価目標レンジ(年+2.5%~+6.5%)の上限に近づきました。
内訳を見ると、食品、住宅、運輸などの上昇幅が前月から拡大しました。深刻な干ばつにより、食品価格や電力料金(水力発電への依存度が高い)の上昇につながっていると見られます。食品価格は秋の収穫シーズンを迎えて価格が落ち着くとの見方もありますが、干ばつによる影響が続くため下がりにくいと思われます。加えて賃金の上昇もあり、物価は全体として当面高止まりしそうです。
②金融政策
中銀は4月2日、政策金利を0.25%引き上げ11.00%とすることを発表しました。政策金利は2013年4月以降9会合連続して引き上げられ、利上げ幅は合計で3.75%となりました。中銀は物価上昇率の高止まりを警戒しながら景気にも配慮し、次回会合(5月27日~28日)まで経済動向を注視するとしました。
利上げ開始から約1年が経過したこともあり、最近は中銀が時間の経過による金融引き締め効果の浸透に言及する場面が多く見られます。今後は景気への配慮をより重視して利上げを一旦打ち止めとし、政策金利を現行水準で当面据え置くとの見方が大勢です。

3.今後の市場見通し
中銀は、景気回復が緩慢ななかでも物価上昇圧力を抑制するという厳しい対応を迫られています。レアルは当面経済指標などにより振れやすく、方向感のない展開となりそうです。
一方、政府は財政緊縮を進めながらも公共投資を拡大するなど、景気に配慮しています。消費が底堅いこともあり、景気見通しは徐々に改善する可能性があります。そうした場合は、レアルの上昇要因になると見られます。
