【デイリー No.1,817】ブラジルレアルの最近の動向と今後の見通し(2014年3月)
2014年3月7日
<ポイント>
●レアルは、米国の金融政策を巡る不透明感が薄らいだことをきっかけに、足元では持ち直しつつあります。
●物価上昇率の低下や公共投資の執行が確実に進むことなどにより、景気は回復に向かうと期待されます。
●高金利や米国のQE3縮小など強弱両方の材料が影響し、レアルは当面方向感のない展開が予想されます。中長期的にはインフラ整備を通じた経済成長率の押し上げ期待などがレアルのサポート材料になりそうです。
1.レアルは足元で持ち直し
昨年10月末以降、経済成長率の伸び悩み、国債の格下げ懸念、米国のQE3縮小などが主な要因となり、レアルは米ドルなどに対し下落傾向となりました。さらに今年1月下旬には、アルゼンチンペソの急落が影響し、下落幅が拡大しました。
足元では、イエレンFRB議長の議会証言で米国の金融政策を巡る不透明感が薄らいだことなどをきっかけに、レアルは持ち直しつつあります。また、政府が名目GDPの0.8%に相当する歳出削減案を発表し、国債の格下げ懸念が後退したこともレアルを支えています。
2.政府は公共投資を拡大し、景気の回復を見込む
ブラジルの2013年10-12月期の実質GDP成長率は、前年同期比+1.9%と、前期の同+2.2%から低下しました。家計消費と固定資産投資の伸び率低下が主な減速要因です。中銀は賃金の上昇などによる物価上昇圧力を警戒し、昨年4月以降、合計3.50%の利上げを実施しており(3月6日時点の政策金利は10.75%)、内需が抑えられたと思われます。
1月の消費者物価指数は前年同月比+5.59%と、前月(同+5.91%)から低下し、2012年11月(同+5.53%)以来の低水準になりました。また政府は、財政緊縮のなかでも今年の公共投資については106億レアル拡大(前年比+16.8%)する方針です。これにより前年比+2.5%の経済成長を目指しています。物価上昇率の低下や公共投資の執行が確実に進むことなどにより、景気は回復に向かうと期待されます。
3.今後の市場見通し
高金利の継続、中銀によるレアル買いの為替介入、景気回復期待などは今後もレアルを下支えすると思われます。一方、米国のQE3縮小や中国など新興国景気の先行き不透明感などから、投資資金の動きは不安定さが残りそうです。これらの材料が影響し、レアルは当面方向感のない展開が予想されます。
ブラジル政府は、道路、空港、港湾、鉄道といったインフラを長期的に整備する計画を進めており、上記のように財政緊縮のなかでも公共投資は拡大する方針です。インフラ整備を通じた経済成長率の押し上げや国際競争力の向上への期待などは、レアルの中長期的なサポート材料です。