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【デイリー No.1,801】最近の指標から見るブラジル経済(2014年2月)

2014年2月18日

<ポイント>
●国内の投資減速に加え、その他の新興国でも景気減速懸念が強まっており、生産の低迷が続きそうです。
●ブラジル中央銀行(以下、中銀)は、これまでのレアル安や良好な雇用情勢などによる物価高を警戒する一方、景気の低迷にも配慮し、次回の会合で利上げ幅を縮小するとの見方が強まっています。
●景気懸念や高金利など強弱両方の材料が影響し、レアルは当面方向感のない展開となりそうです。

1.消費は底堅い一方、投資や輸出の減速で生産は低迷

①小売売上高
 2013年12月の小売売上高(物価上昇の影響を除いた実質ベース)は前年同月比+4.0%と、前月の同+7.1%(改定値)から減速しました。内訳を見ると、家具・家電が同▲0.9%と前月の同+9.1%からマイナスに転じました。中銀による政策金利の引き上げや、政府が製品の購入に対する減税策を徐々に縮小していることなどが要因と見られます。
 ただし、3カ月移動平均で見ると、9月以降4カ月連続で同+5%台となっています。2013年12月の失業率は4.3%と前月の4.6%から低下し、現行の統計が開始された2002年3月以降の最低水準になりました。良好な雇用情勢が下支えとなり、消費は今後も底堅い傾向が続くと思われます。

②鉱工業生産指数・輸出
 2013年12月の鉱工業生産指数は前年同月比▲2.3%と、前月の同+0.3%(改定値)からマイナスに転じました。内訳を見ると、資本財が同+1.8%と、前月の同+9.8%、前々月の同+18.5%から急速に低下しています。4月以降の利上げなどから景気見通しが悪化し、民間投資は勢いを失いつつあると思われます。また、財政緊縮の方針から公共投資の大幅な増加も期待しづらい状況です。
 2014年1月の輸出は前年同月比+0.4%と、前月の同+5.6%から伸び率が低下しました。主な輸出先を見ると、アジア(全体の約29%)や米国(同13%)が前年同月比2桁増となる一方、南米(同22%)やEU(同19%)などは減少しています。国内の投資減速に加え、その他の新興国でも景気減速懸念が強まっており、生産の低迷が続きそうです。

2.中銀は物価高警戒の一方、景気に配慮する可能性も

①消費者物価指数
 2014年1月の消費者物価指数は前年同月比+5.59%と、市場予想の同+5.65%、前月の同+5.91%をいずれも下回りました。内訳を見ると、食品は同+7.26%と全体よりも高いものの、前月を1%以上下回り、全体が前月から低下した主な要因になりました。一方、サービスと教育は前月を上回り8%台となりました。良好な雇用情勢が要因の一つと思われます。
 中銀が2月17日に発表した消費者物価指数に関する調査では、エコノミストの予想中央値は、2014年末に前年比+5.93%、2015年末に同+5.70%と、物価目標の中心値(年+4.5%)を上回る見込みとなっています。これまでのレアル安による物価上昇圧力などから、物価が高止まりする見通しが大勢です。

②金融政策
 中銀は、1月15日に政策金利を0.50%引き上げ、10.50%とすることを発表しました。政策金利は4月以降7会合連続して引き上げられ、利上げ幅は合計で3.25%となりました。
 中銀は、これまでのレアル安や賃金の上昇などにより物価が予想以上に上振れていると懸念しており、次回の会合(2月25日~26日)でも利上げを続けると見込まれます。一方、内外需要の減速が懸念されることもあり、中銀が景気にも配慮し、利上げ幅を縮小するとの見方も強まっています。

3.今後の市場見通し

 昨年10月末以降、レアルは米ドルなどに対し下落傾向となりました。財政収支の悪化、経済成長率の伸び悩み、国債の格下げ懸念などが主な要因です。加えて今年1月下旬には、アルゼンチンペソの急落もレアル安要因になりました。
 米国のQE3縮小などにより、新興国を巡る投資資金の動きは今後も不安定さが残ると見られます。ブラジル景気の先行き不透明感が強まっていることもあり、レアルへの下押し圧力は当面続きそうです。一方、政策金利が10%を超える水準まで引き上げられるなど、金利水準は海外と比較して高く、レアルの下支え要因になりそうです。加えて中銀は、レアル買いの為替介入プログラムを6月末まで続け、レアル安を抑制する方針です。レアルに対して強弱両方の材料が影響すると見られることから、レアルは当面方向感のない展開となりそうです。

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