安倍首相の決断と市場動向 増税延期と衆院解散を決断、再び景気浮揚を図れるか【デイリー】
2014年11月19日
【ポイント1】消費税率10%は2017年4月に延期
衆議院は解散総選挙へ
■安倍首相は18日夜に会見し、消費税率の10%への引き上げを、予定していた2015年10月から1年半延期して、2017年4月からとする方針を表明しました。
■また、消費税率引き上げ延期の是非を問うため、2014年11月21日時点で衆議院を解散し、12月14日に総選挙を実施することも明らかにしました。前回の衆議院総選挙は2012年12月16日に投開票され、自民党が単独過半数を占め、政権与党へ復帰しました。

【ポイント2】GDPは予想外のマイナス
株価乱高下、為替は円安傾向持続
■10月31日に発表された日銀の金融緩和策拡充をきっかけに急速に円安が進み、日経平均株価は10月30日から11月14日まで約1,800円値上がりしていました。
■17日、消費税増税の判断材料とされた日本の7-9月期実質GDP成長率は、前期比年率▲1.6%と予想外の2四半期連続マイナス成長となりました。これを受け、発表当日の日経平均株価は前日比▲517円3銭と大幅に下落、翌18日は同+370円26銭と大幅に反発し株価は乱高下しました。首相会見翌日の19日には、景気の先行きへの不透明感が高まるなか、日銀が金融政策を据え置くなど当面の材料は出尽くしたと見られ、日中一進一退で推移したのち、同▲55円31銭と下落しました。また米ドル円レートは117円台前半に円安が進んでいます。

【今後の展開】景気対策と財政健全化のバランスをどのように取るのかが政策の焦点
■前回の衆議院解散総選挙から約2年、安倍政権は①大胆な金融政策、②機動的な財政政策、③民間投資を喚起する成長戦略を三本の矢として、円安・株高により景気回復を実現してきました。ただし、景気の腰が強くないまま消費税率が8%に引き上げられ、その影響が予想外に景気の重しとなっています。
■政権は増税を延期することによって、消費者マインドや実質所得の低下に歯止めをかけ、景気のテコ入れを図る狙いと見られます。一方、社会保障費の財源が見込みより減ることで、財政健全化の進展は一歩後退となります。今後は景気対策と財政健全化のバランスをどのように取るかが政策の焦点となりそうです。