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【デイリー No.1,895】最近の指標から見る日本経済(2014年6月)

2014年6月20日

<ポイント>
・輸出はマイナスとなりましたが、米欧景気が緩やかながら回復に向かっていることから、今後は増勢に転じ、貿易収支の赤字は緩やかながら改善に向かうと思われます。
・生産は消費税増税による駆け込み需要の反動減などで前月比減少しました。
・企業収益の増加基調が続き、労働環境は引き続き改善傾向を示していると見られます。
⇒4-6月期は駆け込み需要の反動減などでマイナス成長が見込まれますが、消費や輸出が緩やかに回復することで、7-9月期にはプラス成長に復すると思われます。

1.輸出入ともに減少、駆け込み需要の反動で生産も減少

①貿易統計
 5月の貿易収支は▲8,622億円(季節調整後)と前月比横ばいにとどまりました。季節調整前では▲9,090億円となりました。
 輸出額は前年同月比▲2.7%と、15カ月ぶりにマイナスとなりました。品目別では、輸送用機器が自動車や船舶などの減少により同▲7.3%、鉱物性燃料は同▲45.7%と大幅に減少し、この2品目の減少が全体のマイナスの要因となりました。
 一方、輸入額も同▲3.6%と、19カ月ぶりにマイナスとなりました。4月に石油石炭税率が引き上げられことで、鉱物性燃料に前倒し需要が発生していたため、その反動減が影響しました。
 輸出を地域別に見ると、EU向けは同+14.5%と前月の同+12.7%から伸びが加速しましたが、米国が同▲2.8%と2012年12月以来17カ月ぶりの減少となりました。米国は自動車が同▲18.4%と減少したことが大きく影響しました。
 自動車などの輸出減少は一部に海外生産への移管の影響もあると見られますが、全体としては米欧の景気は緩やかながら回復していることなどから、輸出は今後増勢に転じ、貿易収支の赤字は緩やかに改善に向かうと思われます。

②鉱工業生産
 4月の鉱工業生産指数は前月比▲2.8%となりました。主に減少した業種は、食料品・たばこ工業、輸送用機械、電子部品・デバイス工業などで、消費税増税前の駆け込み需要の反動が出たと見られます。一方、増加した業種は、金属製品工業、はん用・生産用・業務用機械工業、非鉄金属工業の3業種となりました。金属製品工業では橋りょうなどが増加しており、公共事業関連など増税の影響が小さい分野が下支えしたと見られます。
 今後の生産動向の見通しを示す製造工業生産予測調査(企業の生産計画に基づく)を見ると、5月は同+1.7%と増加、6月は同▲2.0%と減少となる見込みです。増税後の需要動向の見極めが難しく、企業は6月の状況を慎重に見ているようですが、消費が持ち直してくれば、生産意欲も高まってくると思われ、減少率は縮小することが期待されます。

2.設備投資は増加傾向、物価は増税の転嫁が進む

①法人企業統計・GDP2次速報
 1-3月期の法人企業統計調査(金融・保険業除く、以下同様)では、設備投資が前年同期比+7.4%の12兆2,307億円と、4四半期連続の増加となりました。業種別に見ると、製造業では輸送用機械や食料品などで増加し、全体では同+6.8%と2四半期連続の増加となりました。非製造業では運輸業・郵便業、建設業などで増加し、全体では同+7.7%と4四半期連続の増加となりました。
 経常利益は同+20.2%の17兆4,552億円、売上高は同+5.6%の345兆3,293億円となりました。収益が増加基調にあることは、企業が投資に前向きになる要因です。
 今回の法人企業統計調査を受けて、1-3月期の実質GDP成長率(2次速報)は前期比年率+6.7%と、1次速報値の同+5.9%から大きく上方修正されました。設備投資が上方修正されたことが主因ですが、個人消費も小幅に上方修正されました。

②雇用・物価
 4月の失業率(季節調整値、以下同様)は3.6%と前月と同水準でした。また、4月の有効求人倍率は前月比+0.01ポイントの1.08倍となりました。労働市場の先行きを示す新規求人倍率は同▲0.02ポイントの1.64倍とやや低下しましたが、新規求人数は前年同月比+10.0%と増加していることなどから、労働環境は引き続き改善傾向を示しているとみられます。
 4月のコア消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比+3.2%と11カ月連続のプラスとなりました。4月からの消費税率引き上げの影響もあり、3月の同+1.3%から+1.9ポイント上昇しました。日銀は消費税増税の影響を+1.7ポイントと試算しており、増税分は概ね転嫁されたと見られます。また、物価の基調をより反映する米国型コア消費者物価指数(食料(酒類除く)、エネルギーを除く)も同+2.3%と7カ月連続のプラスとなりました。
 日銀は消費税増税を除く物価上昇率が、暫くの間、年+1%台前半で推移したあと、2014年度後半から再び上昇傾向をたどり2015年度中ごろに年+2%程度に達する可能性が高いと見ています。これまでのところ、日銀の想定通りに推移していますが、円高是正などによる物価押し上げ効果が薄まるため、物価上昇の勢いは緩やかになる可能性もあります。

3.今後の見通し

 消費税増税による駆け込み需要の反動減は見られるものの、百貨店売上高などの消費動向からその影響は前回の増税時より緩やかと思われます。また増税分が価格に転嫁され物価上昇も見られますが、個人消費は概ね底堅く推移していると思われます。企業収益が順調に改善していることなどから、設備投資も増加基調が続くと見られ、内需は底堅く推移すると思われます。一方、輸出は、米欧の景気が緩やかながら回復基調にあることや、中国も景気支援姿勢を徐々に強めていることなどから、今後、持ち直しが期待されます。
 景気は、4-6月期は駆け込み需要の反動減などで減速が見込まれますが、消費や輸出が緩やかに回復することで7-9月期以降は徐々に持ち直し、プラス成長に復すると思われます。

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