【デイリー No.1,856】日本の金融政策(4月30日) ~物価見通しを概ね維持~
2014年4月30日
<ポイント>
●日銀は、30日の政策決定会合で昨年4月からの異次元緩和を維持することを決定しました。
●輸出の回復が後ずれしていることなどから、2014年度の経済見通しをやや下方修正しました。
●消費税増税の影響が不透明なことなどから、追加金融緩和への期待は続くと思われます。
1.昨年4月からの異次元緩和を維持
日銀は30日の金融政策決定会合で昨年4月から続けている「量的・質的金融緩和」(異次元緩和)の維持を全員一致で決定しました。マネタリーベースが年間約60~70兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調整を行うとしています。市場では一部に追加の金融緩和に対する期待もありましたが、今回は見送られました。
2.経済見通しをやや下方修正
同日の午後に発表された「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」で、日銀は2013年度の実質GDP成長率(予想中心値、以下同じ)を1月時点の前年度比+2.7%から同+2.2%へ、2014年度を同+1.4%から同+1.1%へ下方修正しました。輸出の回復が後ずれしていることなどから見通しを引き下げました。また2015年度の予想は従来とほぼ同じ見通しとなり、新たに2016年度の予想(同+1.3%)を発表しました。一方で物価の見通しについては、労働や設備の需給バランスが着実に引き締まり傾向にあることなどから従来の見通しを概ね維持しています。黒田日銀総裁は会見で、目標とする2%に達成する時期については、2015年度中盤という見解を示しました。

3.今後の見通し
異次元緩和からおよそ1年が経過し、日銀が目標とするマネタリーベースは順調に増加し、消費者物価指数も上昇してきています。3月の全国の消費者物価指数(生鮮食品を除く、以下コアCPI)は前年同月比+1.3%となり、消費税増税後の状況が反映される4月の東京都区部のコアCPIは消費税増税がほぼ転嫁されたため、同+2.7%と大幅に上昇しました。このように、現状は日銀が想定している形で推移していると見られます。しかし、消費税増税後の個人消費や鉱工業生産などの指標が着実に回復していくと見るには、まだ各種の経済指標が揃っておらず不透明な要素もあると見られます。特に物価上昇率については、日銀は需給バランスの改善や企業、個人において物価上昇の意識が高まりつつあるとして、目標の2%に向けて上昇していくとしていますが、市場では達成が厳しいという見方もあります。
2015年10月にはさらに消費税率の8%から10%への引き上げが控えています。国内景気は緩やかな回復を示しているものの力強さには欠けるところもあるため、市場のさらなる金融緩和への期待感は続くと思われます。