【デイリー No.1,840】IMFの世界経済見通し(2014年4月) ~日本や新興国を下方修正~
2014年4月9日
<ポイント>
・IMFは世界経済の2014年成長率見通しを、▲0.1%修正して+3.6%、2015年も▲0.1%の+3.8%としました。
・米国の高成長見通しは維持、欧州の見通しは上方修正されましたが、日本や新興国が下方修正されました。
・新興国の成長下振れや、欧州の低インフレが懸念材料ですが、先進国景気の復調が世界経済を支えそうです。
1.世界経済の成長見通しを小幅に下方修正
IMFは世界経済見通しについて、2014年の成長率を今年1月時点のものから▲0.1%修正して+3.6%、2015年も▲0.1%修正して+3.9%としました。IMFは、米国の高成長見通しを維持、欧州の見通しを小幅に上方修正した一方、日本や中国除く新興国の見通しを下方修正しました。

2.欧米など先進国が復調、新興国は緩やかに鈍化
従来から高めに見込まれていた米国の成長見通しが維持されたことは、金融市場にとって安心材料です。米国では、昨年のような財政の崖の下押し要因がはく落したことに加え、雇用情勢の回復、堅調な住宅需要などを背景に、今後も世界経済をけん引しそうです。
欧州では、金融システムへの信頼感の回復などから、南欧諸国の資金調達も容易(金利は低下)となり、財政再建の負担が和らいでいます。また、欧州内では過度の財政緊縮は避けようとする合意も形成されてきており、成長率は2015年にかけて、ドイツなどを中心に次第に持ち直す見込みです。
日本の成長見通しは2014年、2015年の消費税増税での消費下押しが見込まれ、下方修正されました。2014年は景気の鈍化を回避するため、5兆円規模の対策(名目GDP比で約1%)が予定されていることなどを踏まえ、2015年よりも高めの成長が見込まれます。
新興国では、中国の見通しが据え置かれましたが、過去に8%超だった成長率は徐々に低下する見込みです。中国の需要や先進国からの投資動向の影響を受けやすいアセアンの見通しは下方修正されました。また、IMFは資源需要の伸びが以前より落ち着く一方、供給能力が増強されたため、将来は需給のひっ迫感が薄らぐ可能性などにも言及しました。
3.今後の見通し
当面の世界経済は、新興国・途上国の成長見通しの下振れを、復調してきた先進国景気が下支えする格好になると見込まれています。ただし、新興国景気の鈍化も、2015年にかけての継続的なものとは見られていません。先進国経済が復調するに伴って、アジアなど新興国の高めの成長力に注目した投資は次第に拡大していくと見られ、2015年にかけて世界経済の成長率は加速していくと見られます。一方、IMFはリスク要因として中国など新興国経済が下振れする可能性や、なお低成長に留まるユーロ圏経済で低インフレが続き、復調までに想定以上の時間を要する可能性などに触れました。また、高めの成長が見込まれる米国では、量的金融緩和が今年後半にも終了、来年には利上げを検討する局面と見込まれ、IMFはこれが投資活動を抑制する可能性も注視しています。金融市場は、景気・経済は中長期的には上向くとの見方を維持しながらも、今後ともこれらのリスク要因に注目していくものと見られます。