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【デイリー No.1,768】最近の指標から見る日本経済(2014年1月)

2014年1月8日

<ポイント>
・世界的な景気回復基調や円安傾向から、貿易赤字は縮小へ向かう見込みです。
・有効求人倍率は2007年10月以来となる1.00倍を回復し、今後も雇用環境の改善が見込まれます。
・コア消費者物価指数は2008年11月以来の前年同月比+1%台となり、今後も物価の上昇が見込まれます。
⇒大規模な経済対策などにより、今春の消費税増税による景気減速は一時的にとどまる見込みです。

1.外需回復から輸出拡大、内需堅調から生産拡大

①貿易統計
 11月の貿易収支は▲1兆3,463億円(季節調整後)と、2011年3月以来の貿易赤字が継続しました。季節調整前では▲1兆2,929億円でした。
 輸出額は前年同月比+18.4%と、前月の同+18.6%とほぼ程度の増加となりました。品目別では、全体の16%を占める自動車が同+30.1%と前月に続き大幅な増加となりました。また鉱物性燃料や有機化合物なども引き続き大幅に増加しました。
 また、輸入額は同+21.1%と、前月の同+26.2%と比べて増加ペースが鈍化しました。品目別では、発電燃料である液化天然ガスや原粗油などの増加が継続しました。
 輸出を地域別に見ると、中国向けが同+33.1%、米国向けが同+21.2%となるなど、主要貿易相手国を中心に概ね拡大しました。今後も米国を中心に世界経済は緩やかな成長を続けると見込まれ、輸出は堅調に増加することが期待されます。
 今月から米国の量的緩和策(QE)の縮小が始まる一方、日本では大規模な金融緩和の継続もしくは拡大が見込まれ、日米の金融政策の方向性の違いによる円安圧力は続くと思われます。円安傾向は、輸出における価格競争力の改善などが期待され、世界経済の回復に伴う需要拡大とともに、貿易赤字は緩やかに縮小に向かうと思われます。

②鉱工業生産
 11月の鉱工業生産指数は前月比+0.1%と、3カ月連続の増加となりました。業種別に見ると、情報通信機械工業や鉄鋼業、石油・石炭製品工業などが上昇をけん引した一方、はん用・生産用・業務用機械工業や電子部品・デバイス工業などが低下しました。また、在庫指数は同▲1.9%と大幅に低下し、4カ月連続の低下となりました。
 今後の生産動向の見通しを示す製造工業生産予測調査(企業の生産計画に基づく)を見ると、12月は前月比+2.8%、1月は同+4.6%と、引き続き増加傾向が見込まれています。今回の結果を受けて、経済産業省は前月に引き続き「生産は持ち直しの動きで推移」とし、判断を据え置きました。在庫の減少が続いていることなどからも、生産は増加基調を維持すると思われます。

2.雇用、物価ともに順調な回復、上昇が続く

①雇用
 11月の失業率(季節調整値、以下同様)は4.0%と3カ月連続で同水準となりました。また就業者数は前月比+23万人と増加した一方、完全失業者数は同▲5万人となるなど、雇用環境の改善が続いていることを示唆する内容となっています。
 また、有効求人倍率は前月比+0.02ポイントの1.00倍と、2007年10月以来6年1カ月ぶりに1.00倍を回復しました。労働市場の先行きを示す新規求人倍率は同▲0.03ポイントの1.56倍と、4カ月ぶりに前月を下回りました。しかし、2007年8月以来となる1.5倍超の高水準を9月以降維持しており、今後も雇用環境の改善が見込まれます。

②消費者物価指数
 10月のコア消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比+1.2%と6カ月連続のプラスとなり、2008年11月以来5年ぶりに1%台の上昇となりました。物価の基調をより反映する米国型コア消費者物価指数(食料、エネルギーを除く)は同+0.6%と2カ月連続のプラスとなりました。コア、米国型コアともにプラス傾向が明確となり、安定的な物価の上昇基調すなわち本格的なデフレ脱却が期待されるところです。
 物価上昇の主な要因としては、電気代、ガソリン代の継続的な上昇に加え、教養娯楽の項目がこれまでのマイナスからプラスに転じてきたことが全体のプラスに寄与しています。なかでも円安の影響を受けた外国パック旅行の上昇が顕著です。このほか、幅広い項目において上昇が見られており、円高是正の影響が波及していると思われます。今後は円高是正の影響のみならず、賃上げなどを伴う内需拡大に支えられた物価上昇となるかに注目です。

3.今後の見通し

 個人消費など内需は堅調であり、生産は今後も増加基調を維持すると考えられます。内需の堅調さから輸入の増加傾向が見込まれます。一方、今後も日本の主な貿易相手国である米国を中心に世界経済は緩やかな回復傾向となることが見込まれることから、外需は総じて堅調となると思われます。加えて、これまでの円安効果による輸出の拡大も見込まれ、貿易赤字は緩やかに縮小へ向かうと思われます。
 世界経済を見ると、米国では、FRBが2013年12月のFOMCにおいて、2014年1月から資産購入額を減額するという、QEの縮小を決定しました。一方、日本では昨春来の大規模な金融緩和の継続が見込まれる上、追加緩和策への期待もあります。この日米の金融政策の明確な方向性の違いにより、今後も円安・米ドル高傾向となることが見込まれ、貿易赤字の縮小や日本の輸出企業を中心に業績改善が見込まれます。
 今春には消費税率が5%から8%へ引き上げられます。2013年12月には5兆円規模の「好循環実現のための経済対策」が決定されており、景気を下支えすることが期待されますが、4-6月期にかけて一時的な景気減速が見込まれます。前回の消費税率引き上げ時(1997年4月1日、3%→5%)と比較すると、世界経済は回復基調にあり、世界的に金融システムの安定が見られることなどから、今回の増税による景気減速への影響は一時的にとどまり、7-9月期以降は再び回復局面となることが見込まれます。また、安倍政権は経済界に対し、賞与・一時金にとどまらない賃金上昇を求めており、雇用環境の一層の改善とそれによる消費拡大が景気を下支えすることが期待されます。

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