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【デイリー No.1,814】ロシアの株式市場とウクライナ情勢

2014年3月4日

<ポイント>
●ロシアの株式市場は、3月に入り5年5カ月ぶりの大幅な下落を記録しました。ルーブルも2009年3月以来の水準に下落しました。通貨変動を安定させるため、ロシア中央銀行は、緊急利上げを実施しました。
●こうしたマーケットの激しい変動は、ロシアのウクライナへの軍事介入を巡る懸念が背景です。
●ロシア軍のウクライナ南部クリミア半島への配備が進む中、欧米との軋轢は厳しさを増しています。ロシアとNATO軍等との武力衝突は回避されると思われますが、事態は極めて流動的であり、市場も安定性を取り戻すには時間がかかりそうです。

1.ロシア株式市場が大幅調整

ロシアの株式市場(MICEX指数)は3月3日に前日比▲10.8%の大幅な下落となりました(終値ベース)。これは08年11月11日(▲12.6%)以来、約5年5カ月ぶりの下落率です。
週末の3月1日に、ロシアのプーチン大統領は親欧米派による政変が起きたウクライナで、ロシア系住民が大半を占めるクリミア半島に軍事介入することを決めました。これに対して、米国がロシアに対しての経済制裁を検討する考えを示すなど、欧米先進国諸国とロシアの間に緊張が高まっています。ロシア株式市場はこの緊張を嫌う投資家の売りから大きく下落しました。
また、ルーブルも対米ドルで大きく下落しました。14年1月は概ね1米ドル33ルーブル台で推移していましたが、2月に入り35ルーブル台となり、月末、プーチン大統領がウクライナへの軍事介入の方針を表明したことで36ルーブル台となりました。これは2009年3月以来のルーブル安です。
ロシア中央銀行(以下、中銀)は、インフレと高まっていた通貨の変動性の抑制を目的に、3月3日に政策金利を引き上げ、5.5%から7.0%としました。合わせて市場介入も実施されました。中銀は14日にも政策決定会合を開催する予定です。
なお、ウクライナPFTS株価指数は、14年2月中旬にかけて調整した後、20日を底に大きく反騰し、27日までに+35.6%の大幅上昇を記録した後、3月3日まで同▲9.1%の調整となっています。

2.ウクライナ情勢

昨年11月21日以降、ウクライナ政府がEUとの連合協定への署名を延期したことに端を発した混乱は、14年2月28日の新政府発足に続き、ロシアのウクライナ南部への軍事介入という事態によって、ロシアと欧米との間での緊張を伴う新たな局面となりました。
ウクライナ経済の規模(名目GDP)は欧州全体でみても相対的に小さいことから、ウクライナ経済の悪化が欧州経済へ波及する可能性は小さいと思われます。また、ウクライナに対する欧州主要銀行の対外債権比率は最も大きいギリシャで0.3%(*)と、欧米先進国の金融システムに与える影響は限定的と思われます。
(*)欧州主要銀行部門のウクライナに対する対外債権÷各国銀行総資産。2013年第3四半期のデータ(国際決済銀行(BIS))を基に三井住友アセットマネジメント試算。

3.ロシアからの天然ガス供給停止リスクが懸念

ウクライナ情勢で懸念する点があるとすれば、ロシアからの天然ガス供給が停止する可能性を指摘できます。天然ガスはウクライナのパイプラインを経由して欧州に供給されており、ウクライナは天然ガスの輸入代金をロシアに支払っています。支払いが滞れば、ロシアがウクライナ向け天然ガスの供給を停止することは十分考えられ、EU諸国への供給停止を通じて、経済活動へマイナスの影響が及ぶ可能性があります。
ちなみに、2013年12月の外貨準備高は188億ドルでしたが2014年1月には161億ドルまで大きく減少しています。また、外貨準備高のガス輸入金額比は1.6カ月分(13年12月)です。一般に、外貨準備高は輸入額の3カ月分が最低限必要といわれており、足元は大変厳しい状況に追い込まれています。

4.今後の市場見通し

IMFは2月27日、ウクライナ当局からの支援要請に応じて、調査団を首都キエフに派遣しました。EUもウクライナへの金融支援を実施する可能性が高いと思われますが、ウクライナの支払い能力が十分回復するかどうかが引き続き懸念材料となりそうです。
また、ロシア軍のウクライナ南部のクリミア半島への配備が進む中、欧米諸国との軋轢が深まっています。ロシア軍とNATO軍、米軍との武力衝突は回避されると思われますが、事態は極めて流動的であり、市場も安定性を取り戻すには時間がかかりそうです。

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