ホームマーケット週次・月次市場情報【マンスリー No.66】先月のマーケットの振り返り(2014年2月)/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

【マンスリー No.66】先月のマーケットの振り返り(2014年2月)

2014年3月3日

1.概観

トピックス イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、議会証言でQE3縮小の継続を示唆しました。
新興国の通貨は、大幅な政策金利の引き上げや貿易収支の改善などにより、落ち着きつつあります。
株式 FRB議長の議会証言により金融政策の不透明感が後退したことなどから、多くの国・地域の株式市場は上昇しました。
日本株は、成長戦略を巡る不透明感が強まったことなどにより、下落しました。
債券 QE3縮小の継続が見込まれる一方、ウクライナ情勢が緊迫化したことなどにより、米国債利回りはほぼ横ばいとなりました。
為替 南欧諸国の景気や信用力の回復への期待などを背景に、ユーロや豪ドルに対して円が下落しました。
商品 石油製品の在庫が減少したことや、寒波による燃料需要の増加などにより、原油価格は上昇しました。

(出所)Bloombergのデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

2.トピックス

(1) FRBはQE3縮小の継続を示唆、市場の景気への懸念は一服。

<現状>

FRBが昨年12月に決定したQE3の縮小をきっかけに新興国からの資金流出が加速したことや、大規模な寒波の影響により米国の製造業や住宅関連の指標が悪化したことから、市場ではQE3縮小方針の変更の有無が注目されていました。しかし2月のイエレンFRB議長の議会証言などでは、景気は回復基調との判断やQE3縮小の方針に大きな変化はなく、市場の懸念は月末にかけて徐々に収まりました。

<見通し>

イエレンFRB議長は2月の議会証言で、景気見通しに大きな変化があればQE3の縮小ペースの変更の可能性はあるものの、現段階では継続の可能性が高いとしています。また景気が予想通りに回復して行けばQE3の縮小は今年の秋頃に終了するとの認識が示されました。寒波の影響については、判断が持ち越されましたが、一時的としてQE3縮小が今後も続けられた場合、市場は概ね安心材料と受け止めそうです。

(2) 新興国の通貨は、大幅な政策金利の引き上げや貿易収支の改善などにより、落ち着きつつある。

<現状>

1月下旬に急落した新興国の通貨は落ち着きを取り戻しました。トルコで政策金利が大幅に引き上げられたことや、インドネシアで通貨安効果などから輸出が増加し、貿易収支の改善が見られたことなどが要因です。また、インドでは金の輸入の抑制策による輸入の減少が貿易収支を改善させるなど、国ごとに対策が講じられています。

<見通し>

貿易収支の改善傾向が続く場合は、通貨の安定度合いが一段と強まると思われます。また、貿易収支の改善が見られない一部の国では、政策金利が比較的高いことに加え、政府が海外からの直接投資の誘致に積極的なことなどから、旺盛な投資資金の流入が通貨を支えることも考えられます。通貨が今後も持続的に安定するかを占う上で、貿易収支の改善を通じた経常収支の動向や、中央銀行と政府による投資資金流入増への取り組みに注目が集まると思われます。

3.景気動向

<現状>

米国は、悪天候の影響により一時的に経済指標が鈍化したものの、景気の緩やかな回復基調は続いていると見られます。
欧州は、10-12月期の実質GDP成長率が3四半期連続でプラス成長となるなど、景気は緩やかに持ち直しつつあります。
日本は、生産が回復基調にあることに加え、消費の持ち直しも継続しており、景気回復が続いています。
中国は、輸出の増加ペースの加速や堅調な消費活動が見られ、景気は底堅く推移しています。
豪州は、雇用情勢が引き続き弱含んでいるものの、個人消費や輸出の改善が続いており、景気は底堅く推移しています。

<見通し>

米国は、雇用情勢の改善を背景とした個人消費の底堅い推移が見込まれることなどから、景気の緩やかな回復が続くと思われます。
欧州は、ドイツを中心とした域内内需の持ち直しや、米国向け輸出の増加などにより、景気は徐々に回復しそうです。
日本は、消費税増税により一時的に消費が減速するものの、輸出の増加や政府の経済対策により景気回復基調は継続しそうです。
中国は、急拡大した影の銀行が不透明要因であるものの、制御不能となるリスクは限定的と見られ、年7%台程度の成長が続きそうです。
豪州は、住宅市場が景気の下支え要因となるほか、資源輸出の底堅い推移が見込まれることから、景気は次第に持ち直すと思われます。

4.企業業績と株式

<現状>

主要米国企業の2013年10-12月期決算の増益率は前期から上昇しました。日本の主要企業(東証1部、3月本決算、除く金融、電気・ガス)の2013年10-12月期決算は、経常利益が前年同期比で約+50%と大幅に増加しました。

<見通し>

今後の主要米国企業の増益率予想は、1-3月期に一旦鈍化した後上昇傾向となり、今年後半には二桁増に回復する見通しです。日本では、主要企業の2013年度の経常利益は円高修正などが寄与し、前年度比で+30%程度の大幅増益となる見込みです。堅調な企業業績が下支えすることで主要国の株価は底堅く推移すると思われます。ただし、ウクライナ情勢の動向などにより、短期的に上値が抑えられる可能性もあります。

5.金融政策

<現状>

イエレンFRB議長は、議会証言でQE3縮小の継続と低金利政策の維持を示唆しました。欧州中央銀行(ECB)は、政策金利を過去最低の0.25%に据え置きました。日銀は、2013年4月4日に導入した「量的・質的金融緩和」を維持したことに加え、金融機関向けの貸出支援基金枠を従来の2倍に拡充しました。

<見通し>

FRBは、今後の経済指標を見極めながらQE3の縮小ペースを判断すると見られます。政策金利は、インフレ率が2%を下回る場合、失業率が6.5%を下回った後も現行水準で据え置く方針です。ECBは緩和的な金融政策を当面維持し、景気と物価を下支えすると見られます。日銀は2%の物価上昇率などの意欲的な目標の達成に向け「量的・質的金融緩和」を引き続き強力に進め、拡充する可能性もありそうです。

6.債券

<現状>

新興国の通貨が落ち着きを取り戻したことから、米国債などの利回りは月央にかけて上昇しました。しかし、その後は米国の経済指標が寒波の影響から悪化したことなどを受け、利回りは低下しました。米国企業の社債スプレッド(国債との利回り差)は、投資家のリスク回避姿勢の後退などから小幅に縮小しました。

<見通し>

米国の景気回復に伴って、米国債などの利回りには上昇圧力がかかると見込まれます。ただし、FRBはゼロ金利政策を長期にわたり維持すると見られることから、利回りの上昇は緩やかなものになると思われます。米国など主要国の社債市場については、企業の底堅い業績や慎重な財務運営、社債への旺盛な需要などから、社債スプレッドは安定的に推移すると見込まれます。

7.為替

<現状>

米ドル円相場は、ウクライナ情勢が緊迫化したことなどを受け、円が上昇しました。ユーロ円相場は、南欧諸国の景気や信用力の回復への期待などを背景に、円が下落しました。

<見通し>

米ドル円相場は、日銀による大規模な金融緩和策の継続や、米国のQE3の縮小などを背景に、円安・米ドル高観測が引き続き根強く残ると思われます。ユーロ円相場は、日銀の大規模な金融緩和策に加え、ユーロ圏の緩やかな景気回復期待などから、円安に振れやすいと思われます。

8.リート

<現状>

イエレンFRB議長が議会証言で低金利政策の維持を示唆したことや、国債利回りが落ち着いて推移したことなどにより、リート市場は上昇しました。景気の緩やかな回復を背景にオフィス賃料の増加が続くなど、不動産市場のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は概ね底堅く推移しています。

<見通し>

米国では、実質ゼロ金利政策の長期化が見込まれていることから、国債利回りが急上昇するリスクは限定的と見られます。世界景気の緩やかな回復を背景に、不動産市場のファンダメンタルズは堅調に推移すると見られることから、リート市場は底堅く推移すると見込まれます。

9.まとめ

株式 米国を中心に世界景気は緩やかに回復すると見込まれることや、企業業績が堅調に推移していることなどにより、主要国の株式市場は底堅く推移すると思われます。ただし、ウクライナ情勢の動向などにより、短期的に上値が抑えられる可能性もあります。
債券 米国の景気回復に伴って、米国債などの利回りには上昇圧力がかかると見込まれます。ただし、FRBはゼロ金利政策を長期にわたり維持すると見られることから、利回りの上昇は緩やかなものになると思われます。
為替 米ドル円相場は、日銀による大規模な金融緩和策の継続や、米国のQE3の縮小などを背景に、円安・米ドル高観測が引き続き根強く残ると思われます。ユーロ円相場は、日銀の大規模な金融緩和策に加え、ユーロ圏の緩やかな景気回復期待などから、円安に振れやすいと思われます。
リート 米国の実質ゼロ金利政策の長期化が見込まれていることから、国債利回りが急上昇するリスクは限定的と見られます。世界景気の緩やかな回復を背景に、不動産市場のファンダメンタルズは堅調に推移すると見られることから、リート市場は底堅く推移すると見込まれます。

※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。