【デイリー No.1,797】主要国のリート市場の最近の動向(1月) ~円ベースでは下落~
2014年2月12日
<ポイント>
●1月のリート市場は、長期金利が低下した影響などにより、現地通貨ベースでは上昇傾向となりました。
●一方、為替市場で主要国の通貨が円に対して下落したことから、円ベースでは下落しました。
●米国のQE3の縮小は継続される見込みであるものの、FRBは長期金利の急上昇の抑制を図ると見られることなどから、主要国のリート市場は底堅く推移すると思われます。
1.現地通貨ベースで上昇傾向も円ベースでは下落
1月のリート市場は、新興国の成長減速懸念から投資家のリスク回避姿勢が強まり、長期金利が低下したことなどにより、現地通貨ベースでは上昇傾向となりました。しかし、為替市場で主要国の通貨が円に対して下落したことから、円ベースでは下落しました。投資家のリスク回避姿勢の強まりが主な円高要因となりました。
2.主要国のリート市場の振り返り
米国は前月比+2.8%(円ベース、うち米ドル要因は▲3.0%)となりました。2013年末に3%を超えた米国の10年国債利回りが1月末には2.6%台に低下したことを好感し、リート市場は上昇しました。新興国の成長減速懸念から、投資家のリスク回避姿勢が強まったことなどが米国の国債利回り低下の背景です。
豪州は前月比▲4.7%(円ベース、うち豪ドル要因は▲5.4%)となりました。一部リートの買収が好感されたことなどにより上昇しました。
フランスは前月比▲8.9%(円ベース、うちユーロ要因は▲5.0%)、英国は同▲0.5%(円ベース、うち英ポンド要因は▲3.7%)となりました。フランスは、ユーロ圏の小売売上高や製造業購買担当者景況感指数(PMI)が市場予想を上回ったものの、新興国市場に対する警戒感や最近の上昇の反動などから下落しました。英国は、ロンドンなどの実物不動産に対する旺盛な投資需要や、小売売上高などの主要経済指標が堅調であったことなどを背景に上昇しました。
アジア地域は、シンガポールが前月比▲4.2%(円ベース、うちシンガポールドル要因は▲4.2%)、香港が同▲6.0%(円ベース、うち香港ドル要因は▲3.1%)、日本が同▲1.3%となりました。シンガポールは、2013年10-12月期決算が堅調な内容でしたが、リート市場の反応は限定的でした。香港は、中国のシャドーバンキングに対する懸念や、民間企業発表のPMIが低下したことなどにより下落しました。日本は、10年国債利回りが0.6%台に低下したことは好感されたものの、新規上場や公募増資の発表が相次いだことなどにより下落しました。
3.今後の見通し
FRBはQE3の縮小を継続すると見られる一方、政策金利を当面低位に据え置き、長期金利の急激な上昇を抑制すると思われます。また、新興国経済に対する投資家の警戒姿勢は今後も続く可能性がありますが、米国を中心とした主要先進国の景気は緩やかな回復基調に大きな変化はないと見られることから、主要先進国の不動産市場のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は堅調に推移すると見込まれます。これらを背景に、主要国のリート市場は底堅く推移すると思われます。