【デイリー No.1,782】アルゼンチンペソの下落と主要な金融市場の動向
2014年1月27日
<ポイント>
・アルゼンチンペソが23日に前日比▲12%と急落(対ドル)し、24日以降はリスク回避姿勢が強まりました。
・先進国の株安基調や円高などもあり、27日までの2取引日で日経平均は700円近く(4%超)下落しました。
・ただし、同問題の新興国景気や主要企業の業績への影響は限定的と見られ、市場は徐々に落ち着きそうです。
1.背景には米金融緩和策の縮小や新興国への懸念
2014年に入り、市場では新興国経済が従来ほど堅調ではなくなるとの見解が徐々に増えていました。これは、米FRBが昨年12月からQE3縮小を決定したこと(資金の先進国回帰を懸念)、タイやトルコなどいくつかの新興国で政情不安が見られていることなどが要因です。
さらに先週23日には、中国の民間企業による景況感指数が6カ月ぶりに中立水準を割り込み、中国景気の減速を懸念する声も聞かれました。こうしたなか、同日はアルゼンチンの通貨ペソが対ドルで前日比▲12%と急落し、新興国景気などへの懸念が急速に高まりました。
2.24日以降の市場では株安、円全面高
24日の市場では、リスク回避姿勢が世界的に強まり、日経平均が前日比▲1.9%、欧州のユーロ・ストックス50指数が同▲2.9%、米国のダウ平均が同▲2.0%となりました。また、週明け27日の東京市場でも株安が続き、終値は前週末比▲2.5%の1万5,005円73銭となりました。日経平均は心理的な節目と見られる1万5,000円を維持したものの、2取引日での下げ幅は700円近くに達しました。
円は全面高となりました。22日NY市場終値と比較(以下、為替は27日15時時点)すると、米ドルは約2円(約2%)、ユーロは約1円40銭(約1%)の下落となりました。新興国・資源国では、トルコリラ、南アランド、豪ドル、インドルピー、ブラジルレアルなどが影響を受けました。
3.今後の見通し
アルゼンチン通貨の急落には、同国政府が通貨防衛のための外貨準備を充分に保有していないとの見方が背景にあります。米QE3縮小開始に伴う資金の先進国回帰は、ドル買い・現地通貨売りを招く要因です。今回のアルゼンチンペソはやや極端な例と見られますが、今後も経常赤字国や外貨準備の不足が意識される国では、為替が不安定となる可能性があります。通貨が下落した際は、短期的には輸入物価上昇による成長抑制が懸念されるものの、これは輸出競争力の回復や投資先としての利回り向上にもつながるものと思われます。
また、今回日本など先進国の株価が下落した背景には、昨年からの株高の利益を一旦確定させる動きもあったものと思われます。足元ではアルゼンチンペソの下げはすでに一服したと見込まれ、他の新興国への一段の波及は限定的と見られます。加えて、世界の主要企業の業績に与える影響も小さいと見られ、例年通り10-12月期の企業決算へと市場の注目が移っていけば、株価や主要国通貨は次第に安定感を取り戻しそうです。