【デイリー No.1,772】主要国のリート市場の最近の動向(12月) ~現地通貨ベースでは下落、円ベースでは上昇~
2014年1月15日
<ポイント>
●12月のリート市場は、長期金利が上昇した影響などにより、現地通貨ベースでは下落しました。
●一方、為替市場で主要国の通貨が円に対して上昇したことから、円ベースでは上昇しました。
●米国の量的金融緩和策(QE3)の縮小が決定されたものの、米連邦準備制度理事会(FRB)は長期金利の急上昇を抑制すると見られることなどから、主要国のリート市場は底堅く推移すると思われます。
1.現地通貨ベースで下落の一方、円ベースでは上昇
12月のリート市場は、米国でQE3の縮小が決定され、長期金利が上昇した影響などから、現地通貨ベースでは下落しました。一方、為替市場で主要国の通貨が円に対して上昇したことから、円ベースでは上昇しました。米国の金融政策を巡る不透明感がある程度払拭されたことや、日銀の追加金融緩和への期待などが主な円安要因となりました。
2.主要国のリート市場の振り返り
米国は前月比+1.3%(円ベース、うち米ドル要因は+2.7%)となりました。FRBは12月18日、翌月からQE3を縮小することを発表しました。金融政策を巡る不透明感が薄らいだことはプラス材料となりましたが、10年国債利回りが3%を超えるなど金利上昇が警戒され下落しました。
豪州は前月比▲1.4%(円ベース、うち豪ドル要因は+0.5%)となりました。米国のQE3縮小への警戒感や、中国のHSBC製造業購買担当者景況感指数(PMI、12月分)速報値が市場予想を下回ったことなどにより下落しました。
フランスは前月比+1.5%(円ベース、うちユーロ要因は+3.9%)、英国は同+5.5%(円ベース、うち英ポンド要因は+3.8%)となりました。フランスは、米国のQE3縮小への警戒感や、長期金利の上昇などにより下落しました。英国は、ハリファックス住宅価格(11月分)や小売売上高(11月分)の上昇などを受け、景気回復への安心感が強まったことなどにより上昇しました。
アジア地域は、シンガポールが前月比+0.6%(円ベース、うちシンガポールドル要因は+1.9%)、香港が同▲0.0%(円ベース、うち香港ドル要因は+2.7%)、日本が同+2.4%となりました。シンガポールと香港は、米国のQE3縮小や、中国の短期金利上昇への警戒感などにより下落しました。日本は、国債利回りの上昇や2013年末の証券優遇税制の終了を見据えた利益確定売りなどにより下落する局面がありましたが、月末には売り圧力が一巡したことや、円安の進行を背景に株式市場が上昇したことなどを受け上昇しました。
3.今後の見通し
米国では、主要経済指標が底堅く推移していることなどから、QE3の縮小が決定されました。ただし、FRBはQE3の縮小を決定した一方で、政策金利を当面低位に据え置き、長期金利の急激な上昇を抑制すると見られます。また、米国を中心とした世界景気は緩やかな回復基調にあることから、主要国の不動産市場のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は堅調に推移すると見込まれます。これらを背景に、主要国のリート市場は底堅く推移すると思われます。