ECBの追加緩和と市場動向 物価見通しを下方修正し、金融緩和を拡充【デイリー】
2016年3月11日
【ポイント1】包括的な追加緩和決定

金利引き下げと量的緩和拡充など
■欧州中央銀行(ECB)は10日、預金金利のマイナス幅拡大、資産購入策の規模と対象の拡充、現行の長期資金供給策の実質的な延長などを柱とする、包括的な追加緩和を決定しました。
■追加緩和決定の理由は、2%近くとする物価目標を達成するためとされました。今回、ECBは16年の物価見通しを前年比+1.0%から+0.1%と大きく引き下げ、16年と17年の景気と物価の見通しを下方修正しました。
【ポイント2】予想を上回る緩和内容

総裁発言を巡り、市場は乱高下
■今回の追加緩和は前回の昨年12月よりも拡充され、大方の予想を上回る内容でした。発表直後、ユーロは対円、対ドルで下落、株価は上昇、ドイツ国債利回りは低下しました。
■しかし、ドラギ総裁が会見で「一段の利下げが必要と考えていない」と発言したことが伝わると、ユーロ高、株安、ドイツ国債利回り上昇へと反転し、市場の変動が強まりました。
【今後の展開】追加緩和の効果見極めへ
■今回の追加緩和により、企業の資金調達環境が改善し、ユーロ圏の景気回復の動きが緩やかながらも強まることが期待されます。こうした金融緩和の効果が意識されるにつれ、追加利下げ期待の後退で強まった市場の変動も徐々に落ち着くと見られます。
■ドイツ国債の利回りは、強力な金融緩和が続くことから、低位での推移が見込まれます。為替市場では、米国の利上げが予想されるものの米景気の先行き懸念もあり、ユーロは対米ドルで横ばい圏、対円では日銀の緩和姿勢から方向感が出にくいと見られます。株式市場では、強力な金融緩和と企業業績の回復を背景に、底堅い展開が予想されます。
■ECBは、当面は今回の追加緩和の効果を見極める姿勢と見られます。しかし、物価が目標を下回る状況の長期化が予想され、今年半ば以降、さらなる追加緩和が必要になりそうです。