スイス中銀の予想外の政策変更で市場が不安定化【デイリー】
2015年1月16日
【ポイント1】通貨・金利政策を予想外に変更
対ユーロでの為替レート上限を撤廃
■スイス国立銀行(以下、中銀)は15日、通貨政策と金利政策の変更を発表しました。市場参加者の多くにとって予想外の決定です。
■通貨政策では、1ユーロ=1.2スイスフランに設定していた上限を撤廃しました。
■金利政策では、政策金利(3カ月物銀行間金利の誘導目標)を0.5%引き下げて、マイナス1.25%~マイナス0.25%としました。また、中銀への預金金利も0.5%引き下げてマイナス0.75%としました。

【ポイント2】安全資産への資金流入が強まる
スイスフラン上昇、米国国債の利回り低下
■対ユーロでの上限撤廃を受け、スイスフランは対ユーロや対米ドルで急上昇しました。また、ユーロ圏への輸出に依存するスイス経済への懸念が高まり、スイス株式市場は15日、前日比約7%下落しました。
■突然の政策変更を受けリスク回避の動きが強まり、米国の国債利回りは1.8%を割る水準まで低下しました。スイスフラン高につれ円高も進み、翌16日の日経平均株価は前日比1.4%下落するなど、世界的に金融市場に影響が広がっています。

【今後の展開】主要国の政策対応などで、徐々に金融市場は落ち着く見込み
■中銀は2011年9月に対ユーロでの為替レートに上限を導入し、景気の低迷を通貨面からサポートすることとしました。スイスフラン売り・外貨買いの為替介入の負担も限界に近いと見られ、22日のECB理事会を前にユーロ安圧力が強まる可能性を見据え、今回の政策変更に踏み切ったと見られます。
■原油安や資源国経済の減速、地政学リスクなど、金融市場はこれらのリスク要因に振れやすい展開が続いています。こうした展開は当面続くと見られますが、主要国の政策対応などで世界経済の緩やかな回復の見通しが強まれば、徐々にリスク回避的な動きも抑制され、金融市場は落ち着きを取り戻すと見られます。