ユーロ圏の金融政策(2014年8月) 政策変更なし、景気下振れと地政学リスク警戒【デイリー】
2014年8月8日
【ポイント1】政策に変更なし
景気下振れ、低インフレを警戒
■欧州中央銀行(ECB)は7日、政策金利を過去最低水準の0.15%、預金金利をマイナス0.1%に据え置くことを決定しました。
■新たな資金供給策(TLTRO)は9月に第1回目を実施する予定です。ECBは当面、これら発表済みの政策の効果を確認する姿勢と思われます。
■ドラギECB総裁は会見で、景気については下振れリスクがより大きいとしました。5月以降の経済指標を見ると、悪化したもの、良好なものが混在しています。特に、7月の消費者物価の上昇率が前年同月比+0.4%まで低下したことは、ECBや市場の懸念材料です。
【ポイント2】地政学リスクも警戒
対ロ関係の緊張の影響を注視
■ECBは声明で、対ロシア関係の緊張などの地政学リスクに言及しました。ユーロ圏のロシア向け輸出額はGDP比1%未満と大きくないものの、エネルギー供給やロシア企業・銀行の支払い能力が懸念されるなか、景況感は悪化しています。
■このほか、ECBは新興国経済の伸び悩み、世界的な金融市場の混乱などをリスクに挙げました。
【今後の展開】ECBは9月からのTLTROとユーロ安による景気下支えに期待
■9月に発表されるECBスタッフの景気見通しは、小幅に下方修正される可能性がありそうです。
■一方、9月からはTLTROが開始されるほか、足元の対米ドルでのユーロ安は輸出増や物価押し上げの効果があると思われます。ECBはこれらの影響を、今後も慎重に見極めると思われます。
■低インフレ傾向が一段と進む場合には、ABSなど民間資産の購入を含む量的緩和に踏み切る可能性が高まりそうです。
■株式市場では、低金利環境に加え、米中景気の持ち直しなどから企業業績が上向き、株価は底堅く推移しそうです。ただし、地政学リスクの景気・企業業績への影響に注意が必要です。
■債券市場では、金融緩和の期間が長引くとの観測から、債券価格は底堅く推移しそうです。
■為替市場では、ECBの追加緩和への期待が続く一方、日銀にも根強い追加緩和観測があることなどから、ユーロ円は一進一退となりそうです。