【デイリー No.1,884】ユーロ圏の金融政策(6月) ~マイナス金利などの追加緩和策を発表~
2014年6月6日
<ポイント>
・欧州中央銀行(以下、ECB)は政策金利を引き下げ、中銀への預金金利をマイナス0.1%としました。
・民間企業などに向けた貸出残高に応じ、市中銀行が4年間の低利融資を受けられる措置も導入されました。
・資産担保証券(ABS)購入の検討も続けるとされており、政策期待が景気・物価への懸念を和らげそうです。
1.初のマイナス金利と新たな融資措置で貸出を促す
ECBは5日、リファイナンスオペ金利(政策金利)を0.1%引き下げて過去最低の0.15%に、銀行が各国中銀に預け入れる際の金利を従来の0.0%から▲0.1%とすることなどを決定しました。預金金利をマイナスとしたのは日・米・ユーロ圏で初であり、中銀に滞留する資金が貸出に回るよう、強く促すものです。
加えて、銀行が資金繰りの不安なく貸出を増やせるよう、ECBから融資を受けられる新たな措置「TLTRO(ターゲットを絞った長期リファイナンスオペ)」も決定されました。融資期間は4年間と比較的長めで、かつ、貸出時の政策金利に0.1%上乗せという低金利(固定)が適用されます。ECBは今後このオペを四半期に一度のペースで実施していく方針です。なお、同措置で借りられる上限は、民間向け貸出(住宅ローン、金融機関向け除く)の7%と定められており、あくまでも非金融事業向けに貸出を増やす銀行の利用を主眼としています。

2.背景には、物価見通しの下振れ
ECBが異例の措置を組み合わせて発表した背景には、毎四半期発表の物価見通しが下振れたことなどがあります。
また、このところのユーロ高が輸入物価を押し下げて、低インフレ要因となっていたこともあり、ユーロ高へのけん制といった意味合いもあったものと思われます。

3.今後の見通し
ECBは、より強力な資産担保証券(ABS)購入の検討を続ける方針も示しました。今回の決定が市場の想定以上に幅広いものであったことも合わせ、当面は政策期待がユーロ圏景気・物価への懸念を和らげそうです。
ユーロ圏の株式市場では、政策による景気テコ入れへの期待感に加え、米中景気の持ち直し観測などから、企業業績も上向く見通しであり、株価は底堅く推移しそうです。債券市場では、今後の政策への期待や金融緩和の期間が長引くとの観測から、債券価格は底堅く推移しそうです。為替市場では、ECBが追加緩和を実施する可能性がある一方、対円では日銀にも根強い追加緩和観測があることから、目先のユーロ円相場は一進一退となりそうです。中長期的には、ユーロ圏景気の回復への期待感などから、ユーロの底堅さは維持されるものと思われます。