【デイリー No.1,863】ユーロ圏の金融政策(5月) ~金融政策は据え置き、6月にも追加緩和か~
2014年5月9日
<ポイント>
・欧州中央銀行(ECB)は政策金利を据え置いたほか、6月にも追加緩和を実施する可能性を示唆しました。
・高失業率、対ドルでのユーロ高が続くなか、物価見通しが下振れれば、緩和策の必要性が増しそうです。
・ECBは6月に小幅な利下げや量的緩和など、何らかの追加緩和策を講じる可能性が高いものと思われます。
1.金融政策は据え置き、6月の追加緩和を示唆
ECBは8日、政策金利(主要リファイナンスオペ適用金利)を過去最低の0.25%に据え置くことを決定しました。
ドラギ総裁は会見で、6月会合で追加緩和を実施する可能性に言及しました。6月はECBが毎四半期の見通しを発表するタイミングでもあります。同総裁は中期物価見通しの確認が必要との姿勢ですが、市場では6月の追加緩和および見通しの下方修正を視野に入れる投資家が増えたと見られます。
2.高失業率とユーロ高のなか、物価見通しも下振れか
追加緩和観測が高まっている背景には、イタリア、スペインなど南欧諸国の低インフレに歯止めがかかっていないほか、景気回復局面であるにも関わらず、ドイツ、フランスなどの主要国でも物価が低位に留まっていることなどが挙げられます。ユーロ圏は失業率上昇に歯止めがかかり始めた段階で、賃金から物価上昇への波及になお時間を要しそうです。
また、3月のECBの中期見通しが策定された際、為替の前提は1ユーロ=1.36米ドルとされました。ただし、3月以降は1.38~1.39米ドル付近と、2011年後半以来の高水準にあります。こうした水準が見通しの前提となれば、輸入物価を一段と抑える要因ともなり、来月の物価見通しの修正の有無に注目です。
3.今後の見通し
ECBが6月に何らかの追加緩和策を講じる可能性は高まっています。小幅な利下げや、将来の低金利を約束するフォワード・ガイダンスの強化などは比較的実施しやすい政策です。より強力な緩和策である国債や証券化商品の購入などは、ECB内部で異論もあるものの、5月発表の物価関連指標やユーロの水準次第では、可能性は十分にあるものと思われます。
ユーロ圏の株式市場では、量的緩和による景気テコ入れへの期待感に加え、米中景気の持ち直し観測などから、企業業績への見通しも上向く見通しであり、株価は底堅く推移しそうです。債券市場では、量的緩和への期待や従来からのフォワード・ガイダンスの影響から、ECBが金利を低水準に抑制する期間が長引くと予想され、債券価格は底堅く推移しそうです。為替市場では、量的緩和の可能性が意識されるなか、年初からユーロの上値は徐々に重くなっています。ただし、対円では、日銀にも根強い追加緩和観測があることから、今後ともユーロ円相場は底堅く推移しそうです。