【デイリー No.1,800】ユーロ圏のGDP成長率(10-12月期) ~予想上回るが、なお低成長続く~
2014年2月17日
<ポイント>
●ユーロ圏の10-12月期の実質GDP成長率は前期比+0.3%と、市場予想の同+0.2%を小幅に上回りました。
●ドイツ、フランスだけでなく、イタリア、スペインなどにも回復が波及してきましたが、なお低成長です。
●景気低迷で物価上昇ペースは年+1%を下回っており、ECBが対応策を講じる可能性があります。
1.3四半期連続のプラス成長、市場予想も上回る
ユーロ圏の2013年10-12月期の実質GDP成長率は前期比+0.3%と、3四半期連続のプラス成長となりました。市場予想(ブルームバーグ集計)の同+0.2%も小幅に上回りました。
2.イタリア、スペインなどにも回復のすそ野広がる
ユーロ圏のGDPの約3割を占めるドイツは前期比+0.4%、約2割を占めるフランスが同+0.3%と、それぞれ市場予想を小幅に上回りました。ドイツでは年末商戦の低迷も伝えられていましたが、輸出の持ち直しなどが寄与した模様です。また、イタリアが同+0.1%、スペインが同+0.3%など、南欧諸国にも景気回復が徐々に波及してきたことは好材料です。
ただし、ユーロ圏全体の前年同期比の伸びは同+0.5%、前期比の伸びを年率換算した場合も+1.1%に留まります。回復はなお緩やかで、昨夏ようやくプラス成長に転じたイタリア、スペインでは、失業率がそれぞれ12%台、26%台で高止まりしています。南欧諸国の高失業率は、このところ物価の抑制要因となっています。
3.今後の見通し
ユーロ圏では、企業や消費者の景況感が持ち直してきています。また、財政再建路線が以前ほど厳格ではないこと、ドイツを中心に輸出が持ち直してきたことなどもあり、緩やかな景気回復が続きそうです。
一方、懸念は低インフレが想定以上に長引くことです。1月のユーロ圏の消費者物価指数(HICP) は前年同月比+0.8%と、欧州中銀(ECB)の誘導目標である「2%をやや下回る水準」を大きく下振れています。ECB総裁は2月の理事会後に「(低インフレの打開のために)行動する意思も用意もある」との姿勢を明確にしました。特に3月は、ECBが2016年までの景気・物価見通しを更新することもあり、何らかの対応策を講じる可能性があると思われます。対応策は、政策金利の小幅な引き下げなど、微調整程度に留まると見られますが、ECBが景気への配慮を続けているとの見方は、投資家の安心感につながりそうです。
ユーロ圏の株式市場は、域内の景気の回復ペースは緩やかと見られるものの、米国を中心とした世界景気の緩やかな回復や、ECBの景気支援姿勢を背景に、緩やかな上昇傾向が続きそうです。債券市場は、ユーロ圏の金融緩和姿勢が長引くと見られるほか、南欧諸国の信用も回復局面にあるなか、主要国の国債利回りは当面低水準を維持しそうです。為替市場では、ユーロ圏の金融環境の好転や経常黒字基調、日本の金融緩和姿勢や経常赤字基調などを背景に、今後も緩やかな円安期待が残りそうです。