人民元、SDR構成通貨採用へ【デイリー】
2015年11月17日
【ポイント1】「国際通貨」の仲間入り
「自由度基準」を充足
■国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は13日、人民元のSDR(特別引出権)の5番目の構成通貨への採用について、30日の理事会に諮ることを明らかにしました。
■SDRの採用には、2つの基準を満たす必要があります。今年8月の見直しでは、人民元は「貿易量基準」を満たすとされましたが、もう一つの取引の「自由度基準」は判断が先送りされました。今回IMFの実務担当者の提案では、「広く使われ、広く取引される」と「自由度基準」を満たすとされています。

【ポイント2】通貨需要が増加
為替リスク軽減メリットも
■SDRに採用されるメリットは大きく2つあります。一つは、準備通貨として人民元への通貨需要の増加が期待されることです。IMF加盟国は外貨準備の一部を人民元に振り向けることが予想されます。
■もう一つは、人民元建ての決済や金融商品の拡大につながり、中国政府や企業は、外貨建ての取引を抑制して為替リスクの軽減が可能となることです。

【今後の展開】人民元の国際化や自由化の進展による、経済活性化を期待
■30日のIMF理事会では、英国などの欧州勢に加え、米国も支持すると見られ、人民元採用が正式決定される可能性が高まっています。正式決定されると、来年10月に構成割合の見直しが実施され、SDR構成通貨の新比率で運用がスタートします。
■人民元建て資本取引には規制があります。しかし、IMFは「自由度基準」と資本取引規制は別との認識です。中国政府は、次期5カ年計画で人民元取引の国際化や自由化を引き続き重点目標とし、2020年までに資本取引の自由化を進めると見込まれます。人民元のSDRへの採用で、中国が進める新シルクロード「一帯一路」やアジアインフラ投資銀行(AIIB)推進の追い風になることも見込まれ、経済が活性化することが期待されます。