好調な豪州経済
資源価格の上昇もあり、豪ドルは堅調な展開【デイリー】
2017年7月21日
【ポイント1】 高まる経済成長
良好な雇用・所得環境を維持
(1)順調に拡大する雇用と、持ち直す個人消費
■2017年6月の雇用者数は前月比1.4万人増、豪州準備銀行(RBA)が重視するトレンド値は同2.6万人増でした。特にフルタイムの就業者数の増加が目立っています。一方、失業率は前月比横ばいの5.6%でした。
■労働市場の改善に伴い、民間消費も持ち直してきました。小売売上高は、2月の前年同月比2.3%増を当面のボトムとして、4月が同3.1%増、5月が同3.8%増と増加の勢いを強めています。
■豪州経済をセクター別に見ると、非資源セクターは拡大基調を維持しています。一方、資源セクターも、資源価格の持ち直しを受けて立ち直ってきたことから、今後、成長速度は加速する見通しです。
■好調な経済は、豪州企業の業績拡大の追い風となりそうです。
(2)物価は緩やかな上昇、金融政策は現状維持
■17年1-3月期の消費者物価上昇率は、RBAが重視するトリム平均値で見て、前年同期比+1.9%となりました。
■ガソリン価格の上昇など一時的な要因の影響もありましたが、ようやくRBAの目標レンジ+2%~3%の下限に接近してきました。
■今後は景気の持続的な拡大、労働需給の引き締まりが賃金の上昇を促し、物価を緩やかに押し上げる見込みです。
■物価はほぼRBAの想定通りの動きとなっています。他方、労働市場では失業率が改善基調にあるものの、需給は引き締まった状態に至っていません。物価と失業率から判断すると、RBAは当面、政策金利を現行の1.50%で据え置く見通しです。

【ポイント2】鉄鉱石価格は安定へ
中国の需要が底入れの見通し
■豪州の主力輸出品のひとつである鉄鉱石の価格は、17年6月上旬に1トン当たり55ドルを割り込みましたが、これを当面のボトムに持ち直してきました。足元では60ドル台後半で推移しています。
■鉄鉱石の主要産地のひとつである中国の鉱山の損益分岐点は1トン当たり70ドル前後と推計されます。これから判断する限り、今後、中国での過剰生産には歯止めがかかると考えられます。
■中国では社会資本整備のための公共投資が拡大し、鋼材需要が増大しています。こうした需要の拡大に加え、供給の抑制により需給が引き締まり、鋼
材価格が上昇しています。これは鉄鉱石のみならず、原料炭価格等にも追い風となります。

【今後の展開】豪ドルの対円相場は堅調に推移しよう
■豪ドルの対円相場は、16年6月下旬を当面の底に戻り歩調を辿ってきたのち、資源価格の調整を受けて下落しましたが、足元では反発の気配を見せています。
■今後は、①豪州経済の順調な成長が見込まれる、②資源価格の安定が予想される、③経常収支の黒字転換の見通し、④RBAの中立姿勢維持に対して、日銀は緩和姿勢を継続という、金融政策の方向性に違いがある等から判断すると、豪ドルの対円相場は底堅く推移すると予想されます。先進国
の中で豪州の利回り水準は高く、豪ドルや豪州債は投資対象として魅力が大きいと考えられます。
