アジアの債券市場(2017年5月)
長期金利は総じて安定的な推移が見込まれる【デイリー】
2017年5月31日
【ポイント1】 アジアの長期金利はもみあい
米長期金利に概ね連動
■多くのアジア各国・地域の長期金利は、16年11月に大幅に上昇しました。米大統領選挙でのトランプ氏勝利を契機に、米長期金利が急騰したためです。しかし、17年に入り、米長期金利の上昇が一服すると、アジアの長期金利も同様にもみあいに転じ、安定して推移しています。
■モディ首相の経済改革が進むインドでは、債券市場に資金が流入し、16年11月の米長期金利に連動した金利上昇は起こりませんでした。

【ポイント2】多くの国は金融政策維持
フィリピンなどは先行き利上げも
■アジア各国の中央銀行(香港除く)は、17年に入り政策金利を据え置いています。米国は利上げ局面にありますが、通貨の落ち着いた動きやインフレが目標レンジ内に収まる見込みであることから、多くの中央銀行は中立姿勢を続ける見込みです。
■フィリピンやインドの中央銀行は、景気拡大による需要面からのインフレ圧力が高まることや過剰流動性を警戒し、先行き小幅の利上げを行うことで金融環境を適切に調整すると見られます。

【今後の展開】長期金利は総じて安定的な推移が見込まれる
■米国の利上げは、インフレが落ち着いた水準で推移すると予想されるなか、緩やかなペースで実施されると見られます。このため、今後の米長期金利の上昇は緩慢なものになる見込みです。
■経済改革が進むインドや大手格付け機関のS&Pグローバル・レーティング社が長期債格付けを引き上げたインドネシアなど、経済の基礎的条件が良好なアジアの国には、投資資金の流入が期待されます。多くのアジアの中央銀行は中立姿勢を続けると見られ、総じてアジアの長期金利は安定化することが見込まれます。