ホームマーケット日々のマーケットレポートラジャンRBI総裁が退任を表明(インド)/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

ラジャンRBI総裁が退任を表明(インド) 【デイリー】

2016年6月20日

【ポイント1】ラジャンRBI総裁が退任を表明

■インド準備銀行(RBI、中央銀行)のラジャン総裁は18日、自身の任期満了となる9月4日付で総裁を退任する意向を表明しました。インドのエコノミック・タイムズ紙のアンケート調査(5月17日)では、87%がラジャン総裁の続投を希望するなど市場参加者の信認は厚いものでした。また、6月上旬の政策決定会合後の記者会見で、ラジャン総裁は「みなさんから憶測する楽しみを奪いたくない」と冗談を述べ、去就は政府との協議後で決まるとし、その際の余裕のある表情が「任期延長」という印象を与えていたことから、今回の退任発表を市場は驚きをもって受け止めました。

【ポイント2】ヒンズー教至上主義の与党支持母体からの圧力

■今回の退任発表は、国政与党であるインド人民党(BJP)の支持母体である民族義勇団(RSS)が、18日時点で、モディ首相にラジャン総裁の任期延長を拒否する公式見解を送ったことが引き金になったと見られています。報道によれば、ラジャン総裁が2015年10月にデリーで行った講演で、RSSによる多数派ヒンズー教徒の価値観押しつけを批判したことがRSSの反感を買い、モディ首相とジャイトリー財務相がRSSを抑え込めなくなった、と見られます。

【今後の展開】次期総裁の政策運営に注目

■ラジャン総裁の退任決定は、RSSの圧力を受けた形となったことで、宗教的な圧力により経済・金融政策を含めた行政の方向性が変わり得ることを認識させることとなりました。今後は、次期総裁の政策運営に注目する必要がありそうです。現RBI副総裁でラジャン総裁の右腕であるパテル氏が後任に選ばれれば、金融市場に対するネガティブな影響はある程度緩和すると思われます。ただ、モディ政権がラジャン総裁の右腕を新総裁として認めるかは現状、不透明であり、この点はリスクとして注意が必要です。

■ラジャン総裁は、職員向けのメッセージで重要な仕事が2つ完了していない、としました。1つはインフレ率は目標レンジ内にあるものの、政策を決定する「金融政策委員会」の設立が実現していないこと、もう1つが「資産の質の査定(AQR:AssetQuality Review)」で始まった銀行のバランスシートの信頼を一段と向上させること、です。ジャイトリー財務相は、政府はラジャン総裁の業績を高く評価し、総裁の判断を尊重すると述べました。ラジャン氏の後任は近く発表されると見られます。次期総裁が、これまでのラジャン総裁の実績を踏まえ、金融政策委員会の設立や銀行改革など、これまでの改革路線を踏襲できるかが注目されます。

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