ホームマーケット日々のマーケットレポート【デイリー No.1,897】最近の指標から見る豪州経済(2014年6月)/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

【デイリー No.1,897】最近の指標から見る豪州経済(2014年6月)

2014年6月24日

<ポイント>
・雇用環境は、正規雇用者数が増加していることなどから改善傾向にあると見られます。
・消費は賃金の伸び悩みがやや懸念されるものの、住宅価格や株価の上昇の恩恵などで底堅く推移しそうです。
・貿易収支は赤字に転じましたが、輸出環境の改善が見込まれ赤字が拡大する可能性は低そうです。
⇒当面の経済成長率は3%前後での推移が見込まれ、年内の政策金利は据え置かれそうです。

1.雇用環境は改善傾向、消費は底堅く推移

①雇用統計
 5月の失業率は5.8%と、ブルームバーグ集計の市場予想(以下、予想)と一致しました。5月の雇用者数は前月比▲5千人となり、予想の同+1万人を下回りました。4月の雇用者数は同+1万人(修正前は同+1.4万人)へ下方修正されました。5月の雇用者数は予想外に減少しましたが、パートタイムが同▲2.7万人と減少し、正規雇用が同+2.2万人と増加していることから、雇用環境は改善傾向にあると見られます。
 ただし、企業の景況感の回復は緩やかなものにとどまっていることから、雇用環境の改善は緩やかとなりそうです。

②小売売上高
 4月の小売売上高(季節調整済)は、前年同月比+5.7%と前月から小幅に加速しました。前月比では+0.2%となり、予想の同+0.3%を下回りました。
 先行きの参考となる消費者信頼感指数は、6月が93.2(季節調整済)ポイントとなり、2011年8月以来の低水準に低下した前月とほぼ同じ水準となりました。ただし、消費者信頼感指数の低下は、5月に発表された政府の予算案の内容が緊縮的だったことによる一時的な低下との見方もあり、今後持ち直していく可能性もありそうです。
 個人消費は、賃金の伸び悩みがやや懸念されるものの、引き続き住宅価格や株価の上昇、改善傾向にある雇用環境に支えられて底堅い推移が見込まれます。

2.住宅市場は底堅さを維持、輸出は弱含む

①住宅建設許可件数
 4月の住宅建設許可件数は前年同月比+1.1%と、3月の同+20.9%から低下し、予想の同+12.3%を下回りました。前月比は▲5.6%と減少しました。前年同月比の内訳を見ると、集合住宅の建設許可件数が、年初まで速いペースで拡大した反動減の影響が強く出て、同▲17.0%と減少しました。
 政策金利は過去最低の水準にあることなどから、住宅ローン申請件数は増勢を維持しており、住宅市場は底堅さを維持していると思われます。

②貿易収支
 4月の貿易収支は、1.2億豪ドルの赤字となりました。予想の5.1億豪ドルの黒字を大幅に下回り、前月の9.0億豪ドルの黒字から赤字に転換しました。4月の輸出額は、資源価格の下落により石炭輸出額が減少したことなどから全体として前月比▲1.5%と減少しました。一方で、4月の輸入額は、資本財輸入の増加などにより同+2.2%と増加しました。
 主要輸出先国の景気は緩やかな回復が見込まれることや、内需の成長率は横ばいでの推移が見込まれることから、豪州の貿易収支は赤字が大きく拡大する可能性は低そうです。

3.今後の市場見通し

 実質GDP成長率は、1-3月期が外需の好調により予想を上回ったことなどから2014年通年の見通しも若干ながら上振れており、 前年比+3.0%前後での推移が見込まれます。2015年以降は、景気は底堅さを維持しながらも財政の緊縮化が成長率の押し下げ要因となる見込みです。こうしたことから、RBAは政策金利を過去最低水準の2.5%で当面据え置くと思われます。
 豪州の株式市場は、中国の景気刺激策が期待されるなか、景気や企業業績の回復期待から緩やかな上昇基調が続きそうです。債券市場では、景気の回復基調を受けて、債券利回りには緩やかな上昇圧力がかかると見られます。ただし、相対的に高い金利水準や信用力が豪州債券への需要を支えており、債券価格は今後も一進一退となりそうです。
 今年2月以降、豪ドルは、中国の景気刺激策への期待もあるなか、対円、対米ドルともに底を打ち、上昇してきました。しかし、RBAが通貨高へのけん制姿勢を再び示す可能性もあり、上値は抑えられやすいものと思われます。中長期では、相対的に高い金利水準、豪ドル建て債券の高い信用力、主要な貿易相手である中国景気の高めの成長などが下支え材料となり、豪ドルの底堅さは維持されそうです。

関連マーケットレポート