【デイリー No.1,892】最近の指標から見るインド経済(2014年6月)
2014年6月18日
<ポイント>
●外需の回復は、引き続き経済の下支えや経常収支の改善につながり、ルピーのプラス要因となりそうです。
●物価は落ち着いており、インド準備銀行(中央銀行、RBI)は政策金利を当面据え置くと思われます。
●高金利、経常収支の改善傾向、RBIの金融制度改革などこれまでのルピー高要因に加え、新政権に期待される経済構造改革は、中長期的なルピーの支援材料になりそうです。
1.外需が景気を下支え、物価は落ち着く
①鉱工業生産と輸出
4月の鉱工業生産指数は前年同月比+3.4%と、3月の同▲0.5%からプラスに転じました。資本財生産が同+15.7%に拡大し、生産全体を押し上げました。
5月の輸出は同+12.4%と、4月の同+5.3%から伸び率が上昇しました。米国の景気が堅調なことなどから、外需が内需の低迷を補い、景気の下支え要因になっています。
②物価
5月の消費者物価指数は、前年同月比+8.28%と前月(同+8.59%)から低下しました。穀物価格の下落により、食品・飲料が前月から低下したことが主な理由です。
内需の低迷や、ルピーの主要通貨に対する安定化などにより、全体的には物価に落ち着きが見られ、この傾向は続きそうです。

2.政策金利は当面据え置きの見込み
①金融政策
RBIは6月3日の会合で政策金利(レポレート)を8.0%に据え置き、物価上昇率が落ち着いていく場合には追加利上げは当面行わないとしました。ただし、天候要因による農作物価格の上昇や原油価格の上昇などは、利上げのリスク要因として注意する必要がありそうです。
②選挙公約で示された経済政策
新たに政権を担うインド人民党(BJP)の選挙公約では、経済の復活や、産業競争力の強化など、経済政策が重視されています。これまで課題とされてきた、道路、鉄道、電力への投資を促進するなど、低迷する内需と生産活動の回復が期待されます。また、モディ新首相は、州知事時代に外資企業誘致で実績があることから、製造業の発展が見込まれます。

3.インドルピーの見通し
ルピーは、海外と比較して高い金利水準や、貿易収支の改善傾向、RBIの金融制度改革などを背景に2月以降上昇傾向となりました。
5月16日に開票された下院総選挙では、BJPが勝利しました。これまでのルピーの上昇要因に加え、BJPの強固な政権基盤を背景とした、経済構造改革の進展期待もルピーを下支えしていくと見られます。ただし、RBIは行き過ぎたルピー高を回避すると見られることから、ルピーの上値は抑えられ、変動の小さい推移となりそうです。
