【デイリー No.1,879】インドのGDP成長率(2014年1-3月期)~低成長ながら明るい兆しも~
2014年6月2日
<ポイント>
●2014年1-3月期の実質GDP成長率は前年同期比+4.6%と、前期から横ばいとなりました。
●需要項目別に見ると、これまでの利上げの影響などにより総固定資本形成が縮小しましたが、民間消費と純輸出が全体を下支えしました。
●新興国を巡る投資資金の動きに注意が必要ですが、海外と比較して高い金利水準、10年ぶりの政権交代による経済構造改革への期待、貿易収支の改善などから、ルピーは米ドルや円に対し、底堅く推移しそうです。
1.4%台後半の低成長が続く
1-3月期の実質GDP成長率は前年同期比+4.6%と、市場予想の同+4.7%(ブルームバーグ集計)を下回り、前期から横ばいとなりました。2004年から2013年の10年間の四半期ベースの実質GDP成長率の平均(同+7.8%)と比較すると、経済成長率は低い水準が続いています。

2.総固定資本形成が減少、民間消費が回復
産業別に見ると、農業が前年同期比+6.3%(前期は同+3.7%)と堅調でした。一方、製造業が同▲1.4%(前期は同▲1.5%)と前期に続きマイナスとなり、建設業が同+0.7%(前期は同+0.6%)と伸び悩み、サービス業は同+6.4%(前期は同+7.2%)と減速しました。
需要項目別に見ると、民間消費が前年同期比+8.2%(前期同+2.8%)と加速し、総固定資本形成が同▲0.9%(前期同+0.2%)と縮小しました。輸出は同+10.5%(前期は同+11.3%)となり、二桁の伸びを維持しました。輸入は▲3.7%(前期が同▲8.3%)となり、純輸出寄与度は+4.0%(前期は+5.8%)とプラスを維持しました。
1-3月期のGDP成長率は、総固定資本形成の縮小を民間消費と純輸出が下支えしました。インド準備銀行が物価上昇圧力を警戒して政策金利をこれまで段階的に引き上げてきたことで、企業の設備投資への意欲に影響したことが、総固定資本形成縮小の一因と思われます。農業部門の好調による農民の収入増や、自動車販売の回復などから、民間消費は成長率が加速したと見られます。
3.市場見通し
10年ぶりの政権交代により経済構造改革への期待感が高まるなかで、製造業分野での投資環境の改善や、政府によるインフラ投資などが期待され、投資は緩やかな回復が見込まれます。米国など海外景気が底堅いことから、輸出は今後も増加傾向が続き景気の下支え要因になりそうです。消費は、自動車など耐久消費財を主な要因に回復が続きそうです。
5月16日に開票された総選挙では、インド人民党が単独で過半数の議席を獲得しました。強固な政権基盤を背景に、経済構造改革の実施による中長期的な経済見通しの改善がルピーを下支えしていくと見られます。海外と比較して高い金利水準や貿易収支の改善傾向も引き続き支援材料になると見られ、ルピーは米ドルや円に対し、底堅く推移しそうです。ただし、米国の金融政策への思惑や中国をはじめとする新興国景気の先行き不透明感などにより、ルピーは変動が大きくなる可能性もあります。新興国を巡る投資資金の動きは不安定さが残ると見られ、今後も注意が必要と思われます。