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【デイリー No.1,871】最近の指標から見る豪州経済(2014年5月)

2014年5月22日

<ポイント>
・労働市場は雇用者数が増加するなど概ね良好に推移しており、失業率の上昇余地は限定的に止まりそうです。
・消費は賃金の伸び悩みが妨げとなっているものの、住宅価格上昇の恩恵などで底堅く推移しそうです。
・2014年度の政府予算案は緊縮型となりましたが、法人税減税など企業にも配慮されました。
⇒当面の経済成長率は3%をやや下回る程度での推移が見込まれ、年内の政策金利は据え置かれそうです。

1.雇用者数は増加継続、小売売上高は緩やかに回復

①雇用統計
 4月の失業率は5.8%と、3月から横ばいとなりました。3月の失業率は比較的大きく改善しましたが、4月は反動などによる上昇は見られませんでした。
 4月の雇用者数は前月比+1.4万人となり、市場予想の同+9千人を上回りました。また、3月の雇用者数変化は同+2.2万人(修正前:+1.8万人)へ上方修正されました。4月の雇用者数変化の内訳を見ると正規雇用が+1.4万人、パートタイムは±0.0万人と内容的には改善を示す結果となりました。
 企業の景況感の回復は緩やかなものに止まっていることから、今回の結果から失業率の低下が続く環境に変化したと考えるにはまだ早そうです。しかし、市場が想定してきたよりは失業率の上昇余地は限定的にとどまりそうです。

②小売売上高
 3月の小売売上高(季節調整済)は、前年同月比+5.7%と2月の同+5.0%を上回りました。前月比では+0.1%と、2月の同+0.2%から低下しました。先行きの参考となる消費者信頼感指数は、5月は92.9(季節調整済)ポイントと、4月の99.7ポイントから低下しました。
 昨年後半から小売売上高の伸びが急回復した背景には、住宅価格や株価の上昇による資産効果、物価上昇による金額面での押し上げなどがあったと見られます。引き続き資産価格の上昇に下支えされながらも、雇用市場の改善が緩やかなことなどから、個人消費は緩やかな回復に止まりそうです。

2.金融政策は当面据え置き、予算案は緊縮型に

①金融政策
 オーストラリア準備銀行(中央銀行、RBA)は5月の金融政策会合で、当面は政策金利を2.5%に据え置くことが適切としました。
 RBAは5月の金融政策報告書で14年10-12月期の消費者物価指数(CPI)の見通しを0.25%ポイント下方修正し、前年同期比+2.75%と予測しました。年内のCPIは、賃金上昇が抑えられていることやこれまでの豪ドル高による輸入物価の押し下げなどにより、RBAの目標上限となる同+3.0%を大きく超えることは無いと思われます。年内の政策金利は据え置きが続く見込みです。

②2014年度(2014年7月~2015年6月)政府予算案
 13日に発表された2014年度政府予算案は、2017年度に財政収支の黒字化を目指す緊縮的な内容となりました。
 高額所得者向けの増税や医療費の減額など福祉関連予算が削減された一方で、景気にも配慮されており、法人税率が0.15%ポイント引き下げられて28.5%とされました。また、インフラ開発向けに116億豪ドル規模のインフラ整備計画も発表されました。法人税率の引き下げやインフラ整備の進展は、企業活動を後押しする要因です。

3.今後の市場見通し

 2014年の成長ペースは、2014年度予算案が企業活動に配慮しつつも緊縮的な内容となったことなどから、RBAが予想するように年+3.0%をやや下回る程度と見られます。しかし、来年以降は、資源輸出が追い風となるほか、個人消費の底堅さなどを背景に、成長ペースは徐々に加速していきそうです。こうしたことから、RBAは年内の政策金利を過去最低水準の2.5%で据え置くと思われます。
 豪州の株式市場は、地政学リスクが一旦収まるなか、中国の景気刺激策も期待され、景気や企業業績の回復期待から緩やかな上昇基調が続きそうです。債券市場では、景気が緩やかな回復基調にあるとの見方を背景に、債券価格の上値は抑えられています。ただし、相対的に高い金利や信用力が豪州債券の需要を支え、債券価格は一進一退となりそうです。
 今年2月以降、豪ドルは、地政学リスクが一旦収まったことに加えて、中国の景気刺激策への期待もあるなか、対円、対米ドルともに底を打ち、上昇してきました。しかし、RBAが通貨高へのけん制姿勢を再び示す可能性もあり、上値は抑えられやすいものと思われます。中長期では、相対的に高い金利水準、豪ドル建て債券の高い信用力、主要な貿易相手である中国景気の高めの成長などが下支え材料となり、豪ドルの底堅さは維持されそうです。

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