ホームマーケット日々のマーケットレポート【デイリー No.1,868】最近の指標から見るインド経済(2014年5月)/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

【デイリー No.1,868】最近の指標から見るインド経済(2014年5月)

2014年5月19日

<ポイント>
●物価には落ち着きが見られることなどから、インド準備銀行(中央銀行、RBI)は次回会合(6月3日)で政策金利を据え置くと思われます。
●総選挙でインド人民党(BJP)が単独過半数を獲得し、ナレンドラ・モディ氏が首相に就任する見込みです。
●高金利、RBIの金融制度改革姿勢、経常収支の改善傾向は引き続きルピーの支援材料になりそうです。また、政権交代により経済構造改革が積極的に進められるとの期待もルピーの支援材料になりそうです。

1.生産は低迷、外需に期待

①鉱工業生産
 3月の鉱工業生産指数は前年同月比▲0.5%と、2月の同▲1.8%(改定値)からマイナス幅が縮小しました。分野別では鉱業が同▲0.4%、製造業が同▲1.2%、電力生産が同+5.4%となりました。製造業の低迷は、資本財生産の落ち込みが主因です。

②貿易収支
 4月の輸出は前年同月比+5.3%と、2月、3月のマイナスからプラスに転じました。米国の景気が堅調なことなどから、外需が内需の低迷を補い、景気の下支え要因になりそうです。
 一方、4月の輸入は同▲15.0%となり、一時的に縮小幅が小さくなった3月から、概ね最近の縮小ペースに戻りました。内需の弱い状況や金の輸入規制の影響などから輸入は今後も低調に推移すると見られ、貿易収支の赤字が縮小する可能性も視野に入ってきました。

2.物価は落ち着きが見られる

①卸売物価指数、消費者物価指数
 4月の卸売物価指数は前年同月比+5.20%と前月(同+5.70%)から低下しました。同指数は貿易財のウェイトが大きく、昨年9月以降のインドルピーの安定化も影響していると見られます。一方、RBIが重視する消費者物価指数は4月に同+8.59%と前月(同+8.31%)から上昇しました。いくつかの州で悪天候により果物価格が上昇したことが主な理由です。
 内需の低迷や主要通貨に対するルピーの上昇などにより全体的には物価に落ち着きが見られ、この傾向は続きそうです。

②金融政策
 RBIは4月の会合で政策金利(レポレート)を8.0%に据え置き、物価上昇率が落ち着いていく場合には利上げは当面行わない姿勢を示しました。
 足元の物価には落ち着きが見られることから、次回会合でも政策金利は据え置かれる見込みです。ただし、エルニーニョ現象の発生による農作物価格の上昇や原油価格の上昇などは、今年後半の利上げのリスク要因として注意する必要がありそうです。

3.インドルピーの見通し

 ルピーは、高金利、経常収支の改善、RBIの金融制度改革姿勢などを背景に2月以降上昇傾向となりました。
 総選挙(4月7日~5月12日)が実施され、インド人民党(BJP)が282議席と、単独で過半数を獲得したことから、10年ぶりの政権交代となりました。首相に就任見込みのナレンドラ・モディ氏は、グジャラート州知事としてインフラの整備や国内外企業の誘致などの経済政策の実績があり、政権交代により経済構造改革が積極的に進められるとの期待が高まっています。
 これまでのルピー高要因に加え、政治的な要因も、ルピーの支援材料になりそうです。ただし、RBIは急激なルピー高を抑制すると見られることから、ルピーの上昇は比較的緩やかになる可能性があります。

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