【デイリー No.1,860】オーストラリアの金融政策(5月) ~政策金利を据え置き、直近の物価は市場予想を下回る~
2014年5月7日
<ポイント>
・豪中銀(以下、RBA)は市場の予想通りに、政策金利を過去最低水準の2.50%で据え置きました。
・賃金上昇が鈍化するなか、向こう2年間の物価は年+2~3%の中銀目標に合致するとの見方が示されました。
・豪ドル高へのけん制は、昨年と比べれば控えめなものに留められており、豪ドルは底堅さを保ちそうです。
1.金利据え置き、豪ドルの水準へのけん制も控えめ
RBAは6日、市場予想通りに政策金利を2.50%の過去最低水準で据え置くことを決定しました。声明では、金利をしばらく安定させることが適切との方針を維持したほか、向こう2年間の物価は年+2~3%の目標と合致するとの見解が示されました。
豪ドルについては、「歴史的に見れば高い水準にある」と言及するに留め、強いけん制は避けました。
2.直近の物価は市場予想を下回る
4月23日に発表された1-3月期の消費者物価指数(CPI)は、前年同期比+2.9%、前期比+0.6%となりました。市場予想(ブルームバーグ集計)をそれぞれ0.3%、0.2%下回りました。
豪州統計局によると、CPIの集計対象は「貿易で代替可能な分野(全体の約4割、為替の影響が大きい)」と「不可能な分野(同約6割、主に国内要因で変動)」に大別できます。そのうち代替が不可能な分野は、これまで前年同期比+4%前後で推移してきましたが、1-3月期には同+3.1%と、2009年10-12月期以来の低水準となりました。これは賃金の上昇ペースが鈍化するなか、国内からの物価上昇圧力が落ち着いてきたことを示すものです。

3.今後の市場見通し
物価上昇率は、一時的と見られるものの、誘導目標上限に近付きました。RBAは当面、昨年のような豪ドル高への強いけん制は行わず、国外からの物価上昇圧力に配慮しそうです。RBAは政策金利を当面据え置き、今後も物価を注視すると思われます。
債券市場では、景気が緩やかな回復基調にあるとの見方を背景に、債券価格の上値は抑えられています。ただし、相対的に高い金利水準や信用力が豪州債券への需要を支えており、債券価格は今後も一進一退となりそうです。
為替市場では、仮に豪ドルが一段高となれば、RBAがけん制姿勢を強める可能性が高まり、上値は抑えられやすいと思われます。中長期では、相対的に高い金利水準、豪ドル建て債券の高い信用力、主要な貿易相手である中国景気の高めの成長などが下支え材料となり、豪ドルの底堅さは維持されそうです。