ホームマーケット日々のマーケットレポート【デイリー No.1,832】最近の指標から見る豪州経済(2014年3月)/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

【デイリー No.1,832】最近の指標から見る豪州経済(2014年3月)

2014年3月27日

<ポイント>
・雇用者数は急増しましたが、調査対象者の入れ替えが影響しており今後の改善は緩やかになると思われます。
・住宅価格の上昇などを背景に、小売売上高は市場が予想した以上に大幅な増加を続けました。
・貿易黒字額は拡大しましたが、目先では、アジア向け資源輸出が伸び悩む可能性などに注意が必要です。
⇒2月の指標は良好でしたが、一時的、特殊な要因も影響しており、成長は引き続きやや低調と見られます。

1.雇用情勢は改善、小売は予想外の急増

①雇用統計
 2月の失業率は6.0%と、1月から横ばいとなりました。こうしたなか、労働参加率が1月の64.6%から2月は64.8%に上昇していることを踏まえれば、状況は好転していると言えます。
 また、2月の雇用者数は前月比+4.7万人となり、市場予想(以下、予想はブルームバーグ集計)の同+1.5万人を大きく上回り、過去分も上方修正されました。2月の雇用者数の内訳は、正規雇用が同+8.1万人、パートタイムが同▲3.3万人となりました。
 これらは雇用情勢の改善をうかがわせる結果ですが、2月の統計では調査対象者の一部入れ替えがありました。新たな調査対象者は、従来の対象者よりも職に就いている割合が高かったため、結果が良好になったという特殊要因があります。豪州統計局が毎月同時に発表している基調ベースでの雇用者数は、小幅な改善(前月比+9千人)に留まっています。

②小売売上高
 1月の小売売上高(季節調整済)は前年同月比+6.2%と、12月の同+5.7%を上回りました。前月比でも+1.2%と市場予想の同+0.4%を大きく上回りました。一方、先行きの参考となる3月の消費者信頼感指数は99.5ポイントと、2月の100.2ポイントから低下しました。中立水準の100ポイントを下回るのは、昨年5月以来のことです。
 消費者の景気や雇用への見通しは緩やかな悪化が続いています。こうしたなかでも消費が力強く伸びているのは、都市部などで住宅価格が上昇していることによる資産効果の影響と見られます。

2.住宅市場が一段の回復、貿易黒字額も増加

①住宅建設許可件数
 過去最低水準の金利や住宅価格の上昇観測などを背景に、住宅建設許可件数は一段と伸びました。1月の住宅建設許可件数(集合、一戸建ての合計)は前年同月比+34.6%の1万7,514件となりました。この件数は2002年10月以来の高水準です。
 また、住宅ローン総額は昨年10月以降、前年同月比+20%台の堅調な伸びを続けており、販売も堅調と見られます。こうした背景もあり、昨年10-12月期の住宅価格指数は前年同期比+9.3%となりました。

②貿易統計
 1月の貿易収支は、14.3億豪ドル(約1,300億円)の黒字となりました。 今年は2月初旬だった旧正月の休暇を前に、中国の鉄鋼業(世界生産量の約半分を担い、豪州産の鉄鉱石・石炭の最大の輸出先)向けの輸出が1月中に前倒しされたことなどが影響したと見られます。
 中国向けの鉄鉱石価格は、昨年末から3月にかけて約2割下落しており、今後は輸出の勢いが鈍る可能性もあります。ただし、その場合も豪州の輸入額が急増する局面にはないほか、年半ばにかけては最大の資源輸出先である中国の景気(鉄鋼需要)の持ち直しも期待され、貿易収支の悪化は限定的となりそうです。

3.今後の市場見通し

 雇用情勢の悪化に歯止めがかかり、小売売上高も力強く回復してきています。最近は、豪州景気が豪中銀(以下、RBA)の従来の想定以上に強くなるのではないか、との見方も浮上してきました。ただし、今回の指標の改善は統計上の要因や住宅価格上昇による押し上げなどが影響しています。また、資源輸出も1-3月期には勢いが一旦鈍化する可能性があります。
 これらを踏まえると、景気が上振れる可能性も出てきたとは言え、2014年通年での成長ペースはRBAが予想するように年+3%をやや下回ると思われます。RBAは短期的な物価上昇圧力と、中長期的な成長力の低下の双方を警戒しており、しばらくは政策金利を据え置きそうです。
 豪州の株式市場は、新興国や地政学リスクへの懸念が一旦収まるなか、景気、企業業績の回復期待などから緩やかな上昇基調が続きそうです。債券市場では、景気が緩やかな回復基調にあるとの見方を背景に債券価格の上値は抑えられています。ただし、相対的に高い金利や信用力が豪州債券の需要を支え、債券価格は今後も一進一退となりそうです。
 2月以降の豪ドルは、新興国への懸念が一旦収まるなか、対円、対米ドルともに底を打っています。しかし、RBAが通貨高へのけん制姿勢を再び示す可能性もあり、上値は抑えられやすいものと思われます。中長期では、緩やかな景気回復期待に加え、高めの金利水準、豪ドル建て債券の高い信用力、主要な貿易相手である中国景気の高成長などが下支え材料となり、豪ドルの底堅さは維持されそうです。

関連マーケットレポート