【デイリー No.1,826】最近の指標から見るインド経済(2014年3月)
2014年3月18日
<ポイント>
●外需は底堅いと見られるものの、内需は低迷が続くと見られ、景気は緩やかな回復にとどまりそうです。
●足元で物価上昇率が低下傾向にあり、インド準備銀行(中央銀行、以下RBI)の次回4月1日の会合の追加利上げの可能性は後退しています。
●インドルピーは引き続き底堅く推移する見込みながら、総選挙を控え、政治情勢が波乱要因になりそうです。
1.景気は緩やかに回復、経常収支は改善
①実質GDP、鉱工業生産
2013年10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比+4.7%と、前期の同+4.8%から小幅に低下しました。純輸出のプラス寄与が続いた一方、個人消費が減速、資本投資はマイナスになるなど、内需が低迷しました。
1月の鉱工業生産指数は前年同月比+0.1%と、小幅ながら昨年9月以来4カ月ぶりのプラスとなりました。米国など海外景気の回復が続く見通しなどから外需は底堅いと見られるものの、これまでの利上げの影響などから内需は低迷が続くと見られ、景気は全体として緩やかな回復にとどまりそうです。
②経常収支、貿易収支
2013年10-12月期の経常収支の赤字は、42億米ドル(名目GDP対比0.9%)と前年同期の319億米ドル(同6.5%)から縮小しました。輸出が増加した一方、金輸入の抑制策の影響などから輸入が減少し、貿易収支の赤字が大幅に縮小したことが主な要因です。
2月の輸出は前年同月比▲3.7%、輸入は同▲17.1%となりました。輸出が減少に転じたものの、輸入が大幅に減少したことから、貿易赤字は同▲42.4%と大幅に縮小しました。政府は、金の輸入抑制策を少なくとも今年度(2013年4月~2014年3月)の経常収支のデータが判明する時期(6月の見込み)まで維持する方針を示しています。貿易赤字の縮小を通じた経常収支の改善は、当面続きそうです。

2.追加利上げの可能性は後退
①卸売物価指数、消費者物価指数
2月の卸売物価指数は前年同月比+4.68%と前月(同+5.05%)から低下し、昨年5月(同+4.58%)以来9カ月ぶりの低水準になりました。穀物などの一次産品と、燃料等が全体の低下に寄与しました。また、2月の消費者物価指数は同+8.10%と前月(同+8.79%)から低下し、2012年1月(同+7.65%)以来の低水準となりました。
物価上昇率は足元で低下傾向にありますが、3月上旬の大雨で農作物に大きな被害が出たことなどから、食品を中心に今後上昇するとの見方もあります。
②金融政策
RBIは1月28日、賃金の上昇などによる物価上昇圧力を警戒し、政策金利(レポ金利)を0.25%引き上げ、8.00%とすることを決定しました。
一方、景気低迷の影響などから物価上昇率の低下傾向が続く場合には、政策金利をこれ以上引き上げないとの考えも示しました。物価上昇率は足元で大幅に低下しており、RBIの次回4月1日の会合の追加利上げの可能性は後退しています。

3.インドルピーの見通し
底堅く推移する見込みながら、政治情勢が波乱要因
アルゼンチンペソが急落した影響などからインドルピーは1月下旬に下落しましたが、RBIの利上げなどをきっかに持ち直し、足元では底堅く推移しています。
海外と比較して高い金利水準、経常収支の改善傾向、国債格下げ懸念の後退などから、ルピーは底堅い基調が続くと思われます。
インドでは、4月から5月にかけて、インドでは総選挙が実施される予定です。過去10年間にわたり国民会議派(INC)を中心とする連立政権が続いていましたが、景気低迷や政治腐敗などによる同党の人気低下から、最大野党であるインド人民党(BJP)が政権を獲得するとの観測が強まっています。政権交代により経済構造改革が進むとの期待がある一方、第一党でも過半数の議席獲得は困難で、新政権の政策調整は難航するとの懸念もあります。政治情勢は当面ルピーの波乱要因になりそうです。
