【デイリー No.1,823】タイの金融政策(3月) ~政治の混乱を背景に政策金利を引き下げ~
2014年3月13日
<ポイント>
●タイ中央銀行(以下、中銀)は、政策金利を従来の2.25%から2.00%へ引き下げました。
●政治の混乱により、景気のダウンサイドリスクが高まったと判断したことが利下げの主因です。
●中銀は当面政策金利を据え置くと見られますが、政治の混乱の更なる長期化などにより景気のダウンサイドリスクが高まる場合、追加利下げに動く可能性があります。
1.政策金利を2.25%から2.00%へ引き下げ
中銀は12日、政策金利を従来の2.25%から2.00%へ引き下げました。事前の市場予想(ブルームバーグ集計)ではエコノミスト26名中16名が0.25%の利下げを予想しており、今回の中銀の決定は市場予想の大勢に沿ったものとなりました。
2.政治の混乱が景気のダウンサイドリスクを高める
中銀は、政策金利を引き下げた要因として、政治の混乱が続いており、景気のダウンサイドリスクが高まったことを挙げました。政情不安などにより消費者信頼感指数が低下するなか、2013年10月~2014年1月のタイの景気は減速しました。中銀の声明では、主要国の景気回復を背景に輸出は徐々に回復するものの、不透明な政情が民間の消費や投資の回復を遅らせる可能性があるとされました。
2月のコア消費者物価指数の上昇率は前年同月比+1.22%と、前月の同+1.04%から加速しました。ただし中銀は、コア消費者物価指数の上昇率は加速したものの、抑制されている水準にあるとの見解を示しました。
3.今後の見通し
今回の中銀の決定にサプライズは無かったことから、金融市場の変動は限定的となりました。タイの経済は、長引く政治の混乱により、民間消費などの内需や観光業を中心に減速しています。また、タイ憲法裁判所は12日、昨年成立した大型公共事業のための2兆バーツ(約6.4兆円)の特別借入法について違憲判決を下しました。大型公共事業による経済成長の加速が見込まれていたことから、今回の憲法裁判所の判決は経済にとってマイナス材料と見られます。
タイは、人口約3億人にのぼるメコン経済圏の中心国として更なる成長を実現するポテンシャルを有していることに変化は無いものの、足元では長引く政治の混乱による経済への悪影響が顕在化しています。中銀は、当面政策金利を据え置くと見られますが、政治の混乱などにより景気のダウンサイドリスクが更に高まる場合、追加利下げに動く可能性があります。