【デイリー No.1,812】インドのGDP成長率(2013年10-12月期) ~低成長が続く~
2014年3月3日
<ポイント>
●2013年10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比+4.7%となり、前期の同+4.8%から小幅に低下しました。
●これまでのインド準備銀行(中央銀行)による利上げなどから、景気の回復は緩やかにとどまる見込みです。
●新興国を巡る投資資金の動きに注意が必要ですが、海外と比較して高い金利水準、国債格下げ懸念の後退、中央銀行改革の進展期待、貿易収支の改善などから、ルピーは米ドルや円に対し、底堅く推移しそうです。
1.過去と比較して低水準が続く
10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比+4.7%と、市場予想と一致し、前期の同+4.8%から小幅に低下しました。実質GDP成長率は、2012年4-6月期以降、7四半期連続して同+4%台で推移しています。2008年から2012年の5年間の四半期ベースの実質GDP成長率の平均(同+7.3%)と比較すると、経済成長率は低い水準が続いています。
2.景気の回復ペースは緩やかにとどまる見込み
産業別に見ると、「金融・保険・不動産・企業向けサービス業」が+12.5%(前期は同+10.0%)、「地域・社会・個人サービス」が同+7.0%(前期は同+4.2%)となり、比較的堅調でした。一方、「製造業」が同▲1.9%(前期は同+1.0%)とマイナスに転じたほか、「建設業」が同+0.6%(前期は同+4.3%)と伸び悩みました。
インド準備銀行(以下、RBI)は、過去のルピー安や賃金の上昇などによる物価上昇圧力を警戒し、昨年9月から直近の今年1月28日の会合まで3回にわたり政策金利を合計0.75%引き上げ、8.00%としています。利上げが企業の投資意欲や家計の製品購入意欲などに影響していると見られ、内需は勢いを欠く状況です。
純輸出は、輸出が同+11.4%と増加した一方、輸入が同▲3.8%減少し、プラス寄与となりました。過去のルピー安や、米国など海外景気が底堅いことから輸出は今後も増加傾向が続くと見られ、外需は今後も景気の下支え要因になりそうです。ただし、内需が低迷していることから、景気は全体として緩やかな回復にとどまりそうです。
3.市場見通し
アルゼンチンペソが大幅に下落した影響などから、ルピーを含む多くの新興国通貨は1月下旬に下落しました。その後、ルピーはRBIの利上げなどをきっかけに持ち直しつつあります。また、財政赤字を削減する予算案の発表を受け、国債の格下げ懸念が薄らぎつつあることや、RBIの金融政策改革案の進展期待などがルピーを下支えしています。海外と比較して高い金利水準や貿易収支の改善傾向も引き続き支援材料になると見られ、ルピーは米ドルや円に対し、底堅く推移しそうです。ただし、米国のQE3縮小や中国をはじめとする新興国景気の先行き不透明感などにより、ルピーは下振れする可能性もあります。新興国を巡る投資資金の動きは不安定さが残ると見られ、今後も注意が必要と思われます。